オオカミくんと秘密のキス
せっかく元気が出たばかりなのに、雷がそんな私を弱くしていく…





ザーーーーー……………

ザーーーーー………




雨はどんどん強くなっていくばかりで視界が悪くなるし、向かい風が私の歩くスピードをゆるめた。

通行人はほとんど雨宿りしていて、皆雨が収まるのを待っている様子…


駅のロータリーにある大きな時計を見ると、後少しで4時半になるところ。あんなに時間に余裕を見ていたのに、時間が経つのが早すぎる。




どうしよう…

こんな天気じゃ時間通りに凌哉くんの家にたどり着かないかも…


あ、そうだ!

とりあえず連絡だけでもしようっ




私は近くにあったパチンコ店の外の屋根にとりあえず避難して、傘を畳んだ。そしてカバンに入れていたスマホを出して、画面に触れると…




あれ?

あれあれ???



スマホの画面に指を何度も触れみても、画面は真っ暗なまま。

その瞬間…私は忘れていたある事を思い出した…





そうだった…

今朝は何故かスマホの充電が出来てなかったんだっけ…?

それに気づいたのは出かける直前だったし、多美子ちゃんの家に着いたら充電器借りようと思ってたのに…すっかり忘れてたよ…



どうしよう…

こんなところで立ち止まってる暇なんかないじゃん!




私は慌てて傘を開き、また嵐の中を風と雨に立ち向かいながら歩き始めた。

今思えば…コンビニで充電器を買えば良かったと思うのだけれど、この時の私にはそんなこと考える余裕なんかなかった。

凌哉くんの家に早く行かなくちゃいけないということしか頭になかったし、電話をかけたところで凌哉くんに迷惑かけたくもなかったということあったのかもしれない…






ヒュウウウウウゥウウ…………


ザーーーーー………

ザーーーーー……



ドーーーン…!!!!!







嵐はまるで楽器のように私の耳にまとわりつき、とても不愉快だ。




多美子ちゃんにやってもらったメイクは崩れてしまい、

春子に巻いてもらった髪は、雨に濡れてストレートに戻り、

寧々ちゃんにラッピングしてもらったプレゼントも、雨に濡れてしまっていたことに私はまだ気づいていなかった。








とにかく前に進むしかない…



凌哉くんの家にとりあえず着かないと、パーティーも始まらないもんね。

ケーキがないんじゃ誕生日じゃないし…




待っててね凌哉くん。








凌哉くんに会えると思うと、嵐なんて怖くもなんともないよ。





ヒュウウウウウゥウウ~……




バサッッッ

バサバサッッッ






「きゃー!!」



ものすごく強い風が吹き、貸してもらった傘は見事に折れてビニールの部分もボロボロに。





傘が…

せっかく貸してもらったのに…







ゴロゴロ…

ドーーーンっっ!!!!





「ひっ!」


傘がないと急に不安になり、さっきの元気はどこかに行ってしまう。












凌哉くん…
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