オオカミくんと秘密のキス
文化祭
1日目
「では、今年の文化祭は『あんみつ屋』をやろうと思います!」
パチパチパチパチ…!
教室中が拍手に包まれる中、私は『あんみつ屋』と書かれた黒板をぼんやりと眺めた。
夏休みが終わって二学期が始まり、学校生活が戻った。
秋の学校行事といえば文化祭!今HRでうちのクラスの文化祭の出し物を決めたところで、生徒達は皆ワクワクしている。
文化祭かぁ…
中学の時はなかったし初めてだから楽しみかも♪
「当日は着物のコスプレか浴衣を着てもらう予定です」
学級委員のその一言で教室がざわついた。
着物コスプレって…よくわかんないけどとりあえずコスプレってことなんだよね?
実物を見たわけじゃないけど、私絶対似合わないと思うし(笑)だからどっちかって言うと浴衣かなぁ…
「俺は浴衣がいいな」
「…!」
すると、隣りの席から凌哉くんが私の顔を覗き込んで来た。
新学期に入ってすぐに席替えがあり、前と同じで自由に席を決めてもいい方法のルールだった為、一番窓側の席で私は凌哉くんの隣になった。
ちなみに…私の後ろは春子で、その隣りはもちろん柳田くん。晴れてカップルになった2人もすごくラブラブ。
「沙世、お前浴衣着ろよ。多分コスプレは似合わないと思うから…」
「わ、わかってるよ!」
さすがに凌哉くんも、私がコスプレが似合わない顔だってことくらいわかるよね(笑)
「俺も浴衣にするからさ」
そう言うと凌哉くんは、私の方に向かってニッと歯を出して笑った。
凌哉くんの浴衣姿…考えただけでかっこいい………
文化祭。本当に楽しみになって来た!
「文化祭結構楽しみだね!」
その日の放課後。掃除当番の私と春子は、廊下をほうきで掃きながら雑談していた。
「そうだね!しかも私達調理係になったから、メニューとか考えていいんでしょ?ますます楽しみ♪」
凌哉くんは受け付け係になったから離れてしまったけど、私には調理係の方が向いてるからいいや。
「本当だよね!帰りに本屋寄って和菓子の料理本とか見てみようよ~」
「うん!あんみつ屋って地味だけど、結構人気出そうな予感がするよ!二日目は一般の人も来るから幅広く楽しんでもらいたいね。あ、中学の時の友達に声かけたら来てくれるかな?」
「え…」
ゴミをちりとりで集めていた私は、その時に春子の表情が曇ったことに気づいていなかった。
「ほら…高校に入ってから樹里(じゅり)とか全然会ってないから文化祭来てくれないかな~都合が合えばだけどさ」
樹里とは…中学の時に私と春子と3人で仲の良った子だ。
3人が同じクラスになったことは3年の時だけだったけど、テニス部に入っていた春子と樹里が意気投合し、3年間春子と同じクラスで親友だった私は自然な形で樹里とも仲良くなった。
社交的な樹里は男女問わず友達が多くて、3年のクラスでは男子も交えてみんなで仲良くしていた。私が苦手な男子と少しは接することが出来たのは、樹里のおかげだと思っている。
樹里はスポーツが盛んな学校に行ってしまった為私達とは離れてしまい、高校に入ってからは一度も会っていない。
たまにLINEで樹里とは連絡を取り合っているけど、どこか距離を感じるのは気のせいかなぁ…
やっぱり中学卒業して学校が別々だと、自然に付き合いも減っていくものかもしれない。
中学の時は、休日にはよく3人で遊んだりお互いの家に泊まったりしてたのに…
たまには3人で会って昔の話をしたいよ。
「…確か樹里の行ってる高校とうちの学校の文化祭って一緒だった気がするよ」
春子は素っ気なくそう言うと、私が集めたゴミの入ったちりとりを手に取ってごみ箱に捨ててくれた。
「そっか。なら仕方ないね」
「それよりさぁ…沙世は文化祭当日に浴衣着るんでしょ?浴衣希望の人は自分で持参って言ってたけど、どんな浴衣持ってるの?」
急に話を変えた春子にその時は違和感を感じなかった私は、2人で掃除用具を片付けに向かいながら話を続けた。
「普通の花柄の浴衣だよ~水色のやつで親戚の人のお下がりなんだ。だからちょっと古くさいの(笑)」
色がすごく綺麗だから、私は気に入ってるんだけどね…
「いいじゃん、沙世はそういう方が似合うよ♪小物とか買えば今っぽくなるんじゃい?コサージュとか髪飾りとか…そういうの安い店知ってるから今度行こうよ」
「本当に?行きたい!ありがとう!!春子
はコスプレ着るんでしょ?」
「まあね。この見た目と声からして浴衣よりもコスプレかなって」
苦笑いをする春子は、すぐに顔つきを変えて少し頬を赤くした。
「それに…圭吾がコスプレの方がいいって言うからさ。えへへ♡」
照れくさそうに笑う春子はすごく可愛くて、幸せそうだった。
私は春子に笑顔を返した後、自分も凌哉くんに「浴衣にしろよ」って言われた事を思い出して少し顔を赤らめる。
彼氏からあんなふうに言われたら、似合う似合わない別として希望してきた方を着たいと思うのが女子だよね…
あー…夏休みは夏休みで楽しかったけど、学校生活もまた彼氏がいるっていいな♡
「お疲れ~掃除終わった?」
春子と教室に戻ると、先に気づいた柳田くんが笑顔で出迎えてくれる。春子と柳田くんがカップルになってから、放課後は4人で帰ることがお決まりになっていた。
自分の席で荷物を整理していたら、隣に座る凌哉くんが何も言わずに私をじっと見つめてくる…
パチパチパチパチ…!
教室中が拍手に包まれる中、私は『あんみつ屋』と書かれた黒板をぼんやりと眺めた。
夏休みが終わって二学期が始まり、学校生活が戻った。
秋の学校行事といえば文化祭!今HRでうちのクラスの文化祭の出し物を決めたところで、生徒達は皆ワクワクしている。
文化祭かぁ…
中学の時はなかったし初めてだから楽しみかも♪
「当日は着物のコスプレか浴衣を着てもらう予定です」
学級委員のその一言で教室がざわついた。
着物コスプレって…よくわかんないけどとりあえずコスプレってことなんだよね?
実物を見たわけじゃないけど、私絶対似合わないと思うし(笑)だからどっちかって言うと浴衣かなぁ…
「俺は浴衣がいいな」
「…!」
すると、隣りの席から凌哉くんが私の顔を覗き込んで来た。
新学期に入ってすぐに席替えがあり、前と同じで自由に席を決めてもいい方法のルールだった為、一番窓側の席で私は凌哉くんの隣になった。
ちなみに…私の後ろは春子で、その隣りはもちろん柳田くん。晴れてカップルになった2人もすごくラブラブ。
「沙世、お前浴衣着ろよ。多分コスプレは似合わないと思うから…」
「わ、わかってるよ!」
さすがに凌哉くんも、私がコスプレが似合わない顔だってことくらいわかるよね(笑)
「俺も浴衣にするからさ」
そう言うと凌哉くんは、私の方に向かってニッと歯を出して笑った。
凌哉くんの浴衣姿…考えただけでかっこいい………
文化祭。本当に楽しみになって来た!
「文化祭結構楽しみだね!」
その日の放課後。掃除当番の私と春子は、廊下をほうきで掃きながら雑談していた。
「そうだね!しかも私達調理係になったから、メニューとか考えていいんでしょ?ますます楽しみ♪」
凌哉くんは受け付け係になったから離れてしまったけど、私には調理係の方が向いてるからいいや。
「本当だよね!帰りに本屋寄って和菓子の料理本とか見てみようよ~」
「うん!あんみつ屋って地味だけど、結構人気出そうな予感がするよ!二日目は一般の人も来るから幅広く楽しんでもらいたいね。あ、中学の時の友達に声かけたら来てくれるかな?」
「え…」
ゴミをちりとりで集めていた私は、その時に春子の表情が曇ったことに気づいていなかった。
「ほら…高校に入ってから樹里(じゅり)とか全然会ってないから文化祭来てくれないかな~都合が合えばだけどさ」
樹里とは…中学の時に私と春子と3人で仲の良った子だ。
3人が同じクラスになったことは3年の時だけだったけど、テニス部に入っていた春子と樹里が意気投合し、3年間春子と同じクラスで親友だった私は自然な形で樹里とも仲良くなった。
社交的な樹里は男女問わず友達が多くて、3年のクラスでは男子も交えてみんなで仲良くしていた。私が苦手な男子と少しは接することが出来たのは、樹里のおかげだと思っている。
樹里はスポーツが盛んな学校に行ってしまった為私達とは離れてしまい、高校に入ってからは一度も会っていない。
たまにLINEで樹里とは連絡を取り合っているけど、どこか距離を感じるのは気のせいかなぁ…
やっぱり中学卒業して学校が別々だと、自然に付き合いも減っていくものかもしれない。
中学の時は、休日にはよく3人で遊んだりお互いの家に泊まったりしてたのに…
たまには3人で会って昔の話をしたいよ。
「…確か樹里の行ってる高校とうちの学校の文化祭って一緒だった気がするよ」
春子は素っ気なくそう言うと、私が集めたゴミの入ったちりとりを手に取ってごみ箱に捨ててくれた。
「そっか。なら仕方ないね」
「それよりさぁ…沙世は文化祭当日に浴衣着るんでしょ?浴衣希望の人は自分で持参って言ってたけど、どんな浴衣持ってるの?」
急に話を変えた春子にその時は違和感を感じなかった私は、2人で掃除用具を片付けに向かいながら話を続けた。
「普通の花柄の浴衣だよ~水色のやつで親戚の人のお下がりなんだ。だからちょっと古くさいの(笑)」
色がすごく綺麗だから、私は気に入ってるんだけどね…
「いいじゃん、沙世はそういう方が似合うよ♪小物とか買えば今っぽくなるんじゃい?コサージュとか髪飾りとか…そういうの安い店知ってるから今度行こうよ」
「本当に?行きたい!ありがとう!!春子
はコスプレ着るんでしょ?」
「まあね。この見た目と声からして浴衣よりもコスプレかなって」
苦笑いをする春子は、すぐに顔つきを変えて少し頬を赤くした。
「それに…圭吾がコスプレの方がいいって言うからさ。えへへ♡」
照れくさそうに笑う春子はすごく可愛くて、幸せそうだった。
私は春子に笑顔を返した後、自分も凌哉くんに「浴衣にしろよ」って言われた事を思い出して少し顔を赤らめる。
彼氏からあんなふうに言われたら、似合う似合わない別として希望してきた方を着たいと思うのが女子だよね…
あー…夏休みは夏休みで楽しかったけど、学校生活もまた彼氏がいるっていいな♡
「お疲れ~掃除終わった?」
春子と教室に戻ると、先に気づいた柳田くんが笑顔で出迎えてくれる。春子と柳田くんがカップルになってから、放課後は4人で帰ることがお決まりになっていた。
自分の席で荷物を整理していたら、隣に座る凌哉くんが何も言わずに私をじっと見つめてくる…