オオカミくんと秘密のキス
「な、なにか?」
そんなふうに見つめられると緊張するんですけど…せめて何か言ってよ。
「見とれてただけだよ」
「えっっ!」
「ウソ」
「嘘かいっ!」
凌哉くんとの関係は良好で、変わらない付き合いを続けている。
もうすぐ付き合って二ヶ月になるけど、私の気持ちはまだ初心のままで、こうやって他愛のない話をしているだけなのにドキドキしてしまう。
「ん……」
帰り道。家まで送ってくれた凌哉くんが、うちのアパートの入り口の脇に入り少し話したあと、帰り際に私にキスをした。
学校が始まってからこれもお決まりになっていて、凌哉くんからキスされるたびもっと相手の事が好きになってるのがわかる…
「好きだよ」
「…私も」
お互いの唇が離れると、凌哉くんは私の耳元で囁いた。恥ずかしい気持を抑えて、私も凌哉くんに気持ちに応える…
「また明日な」
「うん。送ってくれてありがとう」
この瞬間がいつも寂しい…
夏休みと違って明日は学校があるから、凌哉くんと一緒にいられる時間が限られてしまう。
「夜LINEするから」
「わかった。気をつけてね…」
帰っていく凌哉くんに手を振りながら、私はしょんぼりとしていた。
見えなくなるまで見送っていると、角を曲がる辺りでこっちを振り返ってくれた凌哉くんにもう一度手を振り家に入る…
幸せだなぁ。
今のところなんのトラブルもないし、凌哉くんと喧嘩すらもない平和な日々を送っている…
それにもうすぐ文化祭だもんね!
楽しいことが目の前にあると、余計に幸せだなって思えるよ♪
ガチャ
「ただいまーお母さん!!私の浴衣ってどこにしまったっけ?」
家に帰るなり、有給を取ってで家にいるお母さんに話しかける私。
文化祭が楽しみで楽しみで仕方なかった。
しかし、文化祭当日に思わぬ事件に巻き込まれるなんて…この時の私は知る由もなかった…
文化祭当日。
「きゃー!尾神くんの浴衣姿っ!!」
「超かっこいいんだけど~」
待ちに待った文化祭の1日目がやって来て、「あんみつ屋」をやるうちのクラスは生徒達が全員で和装服に身を包んでいた。
予定していた通り浴衣か着物コスプレを着用している生徒達の中で、ひときわ目立っているのは凌哉くんだった…
普段使っていない教室を借りて、部屋の半分を机で仕切り上から垂れ幕をして隠して、その半分を女子の更衣室として使いもう半分はうちのクラスの控え室として利用していた。
着替えを済ませた生徒達は控え室の方で待機していて、その中にいる凌哉くんの浴衣姿を見て女子達は興奮しているみたいだ…
私は浴衣に着替えながら、更衣室の隙間からその光景を目の当たりにしていた。
紺色の大人っぽい浴衣を着ている凌哉くんは、帯を腰の方に下ろしていて胸元を少し開けていて、かっこよく浴衣を着こなしている。
クラスの女子達はそんな凌哉くんに釘付け…
誰がどう見てもかっこいいけど…私からすると面白くない…
「尾神くんモテモテだね。まああれじゃあしょうがないか」
隣でメイクを直す春子が苦笑いをした。
着物モチーフのミニスカートでフリフリのエプロンがついているコスプレを着ている春子は、その服がすごく似合っている。
ガラ…
すると更衣室側のドアが開き、女子数名が中に入ってきて自分達の荷物を開けていた。私は髪の毛を直しながら、何気なく女子達の会話に耳を傾ける。
「尾神くんの写メget~」
「いいなぁ♪あとでちょうだい!」
その言葉を聞いて、思わず後ろを振り返って女子達を見てしまう私…
その中の1人の女子は友達に自慢げにスマホを見せびらかしていて、遠くてよくみえないがそのスマホの画面には浴衣姿の凌哉くんが写っていると思われる。
しゃ、写メ撮ってる…
私まだ撮ってないのに…あの子のスマホには浴衣姿の凌哉くんがいるの!?
くぅぅ~と悔しがっている私を見て、春子はクスクスと笑った。
「柳田くんもかっこいいよね~」
「うんうん!爽やかな感じがいいよね♪」
「一緒に写真撮っちゃおうかな~尾神くんに言うのってちょっと怖いけど、柳田くんならOKしてくれそうだよね」
女子達のその言葉にメイクを直していた春子が動きを止めて、眉をしかめていた。
なるほど…
凌哉くんは見た目とか雰囲気が怖いから、写真を撮るとしても盗撮的な形だけど…柳田くんは見た感じも優しいから、出来ればツーショット狙ってるってことか。
「沙世。準備出来たら向こう行こう!」
「う、うん!」
春子はメイク道具をテキパキとしまうと、スっと立ち上がった。私は巻いている浴衣の帯をくいっと上に上げて、2人で更衣室を出て控え室へ向かった。
前に言っていた通り、春子に教えてもらった小物屋さんで浴衣のコサージュを買って帯につけたり、髪もお団子にしてそこに大きな花の髪飾りをつけた私…
一応古くさい感じは取れたとは思うけど…凌哉くんはこれを見てどう思うかな。
お世辞でも可愛いって言ってくれるかな…
ガラ…
控え室の方のドアを開けると、そこにいる生徒達は一瞬こっちに目を向ける。
いつもと違うみんなの格好になんだか新鮮な気持になりながら、私と春子は部屋に入った。
「春!」
そんなふうに見つめられると緊張するんですけど…せめて何か言ってよ。
「見とれてただけだよ」
「えっっ!」
「ウソ」
「嘘かいっ!」
凌哉くんとの関係は良好で、変わらない付き合いを続けている。
もうすぐ付き合って二ヶ月になるけど、私の気持ちはまだ初心のままで、こうやって他愛のない話をしているだけなのにドキドキしてしまう。
「ん……」
帰り道。家まで送ってくれた凌哉くんが、うちのアパートの入り口の脇に入り少し話したあと、帰り際に私にキスをした。
学校が始まってからこれもお決まりになっていて、凌哉くんからキスされるたびもっと相手の事が好きになってるのがわかる…
「好きだよ」
「…私も」
お互いの唇が離れると、凌哉くんは私の耳元で囁いた。恥ずかしい気持を抑えて、私も凌哉くんに気持ちに応える…
「また明日な」
「うん。送ってくれてありがとう」
この瞬間がいつも寂しい…
夏休みと違って明日は学校があるから、凌哉くんと一緒にいられる時間が限られてしまう。
「夜LINEするから」
「わかった。気をつけてね…」
帰っていく凌哉くんに手を振りながら、私はしょんぼりとしていた。
見えなくなるまで見送っていると、角を曲がる辺りでこっちを振り返ってくれた凌哉くんにもう一度手を振り家に入る…
幸せだなぁ。
今のところなんのトラブルもないし、凌哉くんと喧嘩すらもない平和な日々を送っている…
それにもうすぐ文化祭だもんね!
楽しいことが目の前にあると、余計に幸せだなって思えるよ♪
ガチャ
「ただいまーお母さん!!私の浴衣ってどこにしまったっけ?」
家に帰るなり、有給を取ってで家にいるお母さんに話しかける私。
文化祭が楽しみで楽しみで仕方なかった。
しかし、文化祭当日に思わぬ事件に巻き込まれるなんて…この時の私は知る由もなかった…
文化祭当日。
「きゃー!尾神くんの浴衣姿っ!!」
「超かっこいいんだけど~」
待ちに待った文化祭の1日目がやって来て、「あんみつ屋」をやるうちのクラスは生徒達が全員で和装服に身を包んでいた。
予定していた通り浴衣か着物コスプレを着用している生徒達の中で、ひときわ目立っているのは凌哉くんだった…
普段使っていない教室を借りて、部屋の半分を机で仕切り上から垂れ幕をして隠して、その半分を女子の更衣室として使いもう半分はうちのクラスの控え室として利用していた。
着替えを済ませた生徒達は控え室の方で待機していて、その中にいる凌哉くんの浴衣姿を見て女子達は興奮しているみたいだ…
私は浴衣に着替えながら、更衣室の隙間からその光景を目の当たりにしていた。
紺色の大人っぽい浴衣を着ている凌哉くんは、帯を腰の方に下ろしていて胸元を少し開けていて、かっこよく浴衣を着こなしている。
クラスの女子達はそんな凌哉くんに釘付け…
誰がどう見てもかっこいいけど…私からすると面白くない…
「尾神くんモテモテだね。まああれじゃあしょうがないか」
隣でメイクを直す春子が苦笑いをした。
着物モチーフのミニスカートでフリフリのエプロンがついているコスプレを着ている春子は、その服がすごく似合っている。
ガラ…
すると更衣室側のドアが開き、女子数名が中に入ってきて自分達の荷物を開けていた。私は髪の毛を直しながら、何気なく女子達の会話に耳を傾ける。
「尾神くんの写メget~」
「いいなぁ♪あとでちょうだい!」
その言葉を聞いて、思わず後ろを振り返って女子達を見てしまう私…
その中の1人の女子は友達に自慢げにスマホを見せびらかしていて、遠くてよくみえないがそのスマホの画面には浴衣姿の凌哉くんが写っていると思われる。
しゃ、写メ撮ってる…
私まだ撮ってないのに…あの子のスマホには浴衣姿の凌哉くんがいるの!?
くぅぅ~と悔しがっている私を見て、春子はクスクスと笑った。
「柳田くんもかっこいいよね~」
「うんうん!爽やかな感じがいいよね♪」
「一緒に写真撮っちゃおうかな~尾神くんに言うのってちょっと怖いけど、柳田くんならOKしてくれそうだよね」
女子達のその言葉にメイクを直していた春子が動きを止めて、眉をしかめていた。
なるほど…
凌哉くんは見た目とか雰囲気が怖いから、写真を撮るとしても盗撮的な形だけど…柳田くんは見た感じも優しいから、出来ればツーショット狙ってるってことか。
「沙世。準備出来たら向こう行こう!」
「う、うん!」
春子はメイク道具をテキパキとしまうと、スっと立ち上がった。私は巻いている浴衣の帯をくいっと上に上げて、2人で更衣室を出て控え室へ向かった。
前に言っていた通り、春子に教えてもらった小物屋さんで浴衣のコサージュを買って帯につけたり、髪もお団子にしてそこに大きな花の髪飾りをつけた私…
一応古くさい感じは取れたとは思うけど…凌哉くんはこれを見てどう思うかな。
お世辞でも可愛いって言ってくれるかな…
ガラ…
控え室の方のドアを開けると、そこにいる生徒達は一瞬こっちに目を向ける。
いつもと違うみんなの格好になんだか新鮮な気持になりながら、私と春子は部屋に入った。
「春!」