オオカミくんと秘密のキス
私がそう聞くと、樹里は少し間を置いたあとで話し始めた。






「沙世達の高校って明日が文化祭って聞いたんだけど本当?」

「うん、そうだよ!樹里の所も明日なんでしょ?」

「え?ううん。うちの高校は来週なんだ」


あれ?違った…

樹里の通う高校も今日から文化祭だって、春子が言ってたような気がしたんだけど…勘違いだったかな?






「それでね。明日絢人(あやと)と一緒に、沙世の高校の文化祭に遊びに行こうと思うんだけど…」

「マジで!?」


絢人とは中学の同級生で、樹里や春子を交えて仲良くしていた男子。

野球部の部長でイケメンだったし結構モテていた絢人は、性格もいいし勉強もスポーツも出来る優等生タイプだった。






「おいでよ!ってゆーか来て!!絢人に会うのも久しぶりだな~」


樹里と絢人は同じ高校に通っているから、今でも仲がいいみたいだ。





「良かった…」

「楽しみ~♪後で春子にも伝えとくね!明日は久しぶりに語ろうよ!」

「あっ…春子には言わないで!」

「え…」


急に声を荒らげる樹里に、私は驚いて思わず声を詰まらせてしまった…




春子には言わないでって…

どういうこと…?







「ほ、ほらっ…春子に会うのも超久しぶりだからさ!サプライズ的な感じで会いたいみたいな…」

「あ、そういうことね」


樹里と春子は時々連絡を取り合ったりしてるのかな…?

あんまりそういう事春子から聞かないけど…




「沙世には先に明日行く事だけは話しておこうかなと思って…」


春子にはサプライズで私には事前に話すっていう…この差はなんだろう(笑)

ま、たいしたことではないけどさ。






「お昼前には行くから!」

「わかった!じゃあ明日ね」


電話を切ると、私の頭の中は中学の時の記憶が駆け回っていた…


中学かぁ…

卒業してからまだ一年も経ってないのに、すごく前のことのように感じるな。


あの頃も楽しかったけど今はまた違う楽しさがあって、それが段々当たり前になっていくから昔のことが遠く感じるのかもしれない…

ま、明日は中学のメンバーと会えるのか!


楽しみだな♪







「電話終わった?誰から?」


私の様子を伺うように、凌哉くんが私に近づいてきた。






「中学の時の友達からだよ~明日うちの文化祭に来るんだって!凌哉くんにも紹介するよ」

「お前小川以外にも友達いたんだ」

「う、うるさいな!」


からかうように笑う凌哉くんの腕を叩き、私達は2人でまるでデートのように校内を歩き回り…

文化祭の1日目はとても楽しいものになった。


明日の文化祭は波乱な1日になるとは知らずに…
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