オオカミくんと秘密のキス
「…」


さっきから沈黙が続いたまま、私達は全員で屋上までやって来た。

廊下での春子の行動が他の人達に注目されてしまい、問題になる前に逃げるように違う場所に移動して来たのだ…


階段を上りながら、私はさっきの春子の言葉を頭で繰り返しながら思い出していた。




あの3人に何があったんだろう…

中学の友達だったのに…もしかしたら仲良しだと思ってたのは私だけだったのかな。

春子のあの行動と表情からして、よっぽどのことがあったとしか思えない。

いつもサバサバしてて気の強い春子だけど、あんな事まではさすがにしないしな…




なんだか気が重い。

あの3人の関係をきっとこれから知ることになる…それが怖いよ。


心細くなっている時に隣にいる凌哉くんをちらっと見ると、かなり面倒くさそうな顔をしておまけにあくびをしていた。




ちょっとちょっと…!

彼女がこんなに落ちてる時にあくびってっ!

少しは慰めてくれるとか…「大丈夫だよ」とか言ってくれないの?


拍子抜けしたから、おかげでちょっとだけ心が軽くなったけどさ…






「大丈夫?」


前を歩く春子と柳田くん。

柳田くんはさっきから春子の背中をさすっていて、泣いている彼女を慰めてる。


後ろにいる樹里と絢人はずっと手を繋いでる…



本当に何があったっていうの…?






ガチャ…




屋上のドアを開けて外に出ると、空は雲一つない青空でいい天気。

なのに…私達はどよーんとしている。



とりあえず屋上の端のフェンスの辺りに集まると、重い空気の中先に口を開いたのは絢人だった…







「春子…本当にごめん!」


絢人は春子の前まで来ると、深々と頭を下げて言った。





「私も…ごめんなさいっ!」


絢人に並んで樹里も春子に深く頭を下げた。





「許さないって言ったでしょ。謝られても困るんだけど」


泣いて腫らした目をして、春子は鼻をすすりながら2人から目をそらした。





「ねえ…何があったの?」


私は春子に近づいて背中をさすりながら話しかけた。春子はしばらく黙っている。






「話してよ…私達友達でしょ」


私のその言葉に3人は表情を曇らせた。



私達はもう友達じゃないの…?

そう思ってるのは私だけ……?






「萩原。俺が悪いんだよ」


絢人が申し訳なさそうに口を開く。




「違う!私が悪いの!」


絢人をかばうように樹里が声を荒らげた。








「どういうこと…?」


私が問いかけると、隣にいる春子が涙をぬぐいながら言った。







「私…中1の時……絢人の事が好きだったの」

「え?」



春子が絢人のこと…?



嘘…

全然知らなかった…



春子と絢人が仲いいことは知ってたけど…まさか好きだったなんて…






「でも…絢人は沙世の事好きだったんだよね」

「…………え?ええ!」


思いもよらない事実に、声が裏返りおまけに顔が真っ赤になった。
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