オオカミくんと秘密のキス
凌哉くん…

さっきのはとっさの思いつきでも悪ノリでもなんでもなくて、私達のことを考えてくれてたんだ…






「それに…本気でやらないとこういうのは面白くないしな。なんせ沙世からのキスがかかってるわけだし」

「…」


燃えてるな、凌哉くん…

私のキスが欲しいって理由で闘争心燃やしてくれるのは嬉しいけど、何度考えてもみんなの前でっていうのはやっぱり恥ずかしいよ。

私も頑張って競技に出るけど、申し訳ないけど出来れば優勝はしたくないなぁ…






「ではいきますよー!皆さん位置についてください!」


校庭に引かれた白い線の上にカップル達が並び、全員が息を飲んだ…





「怪我だけはしなようにな」

「うん!圭吾もね」


春子と圭吾カップルは、顔を見合わせてにっこりと微笑んだ。




「俺らはスポーツやってるんだから…こんなの余裕だろ」

「そうだね」


樹里と絢人は余裕な笑みを浮かべ、スポーツマンのような顔をつきに変わった。

それを見た春子が「バカみたい」とボソッと言った。



春子…

樹里と絢人に関してはどんな言葉も逃さないね。





「優勝優勝優勝優勝…」


隣でぶつぶつ言う凌哉くんは、まるで呪文のように何度も「優勝」とつぶやいていた。

そして手錠で繋がれた私の手を握ると、そのまま私の髪にそっとキスをした…



ちょっとだけやる気になってきた…

私も頑張ろっと♪








「位置について~…………よーい!どんっ!!!!!」



係の生徒の掛け声と共に、私達参加カップル達は一斉に折りたたんである地図を開いた。

手錠で片手が繋がっているから、地図を開くのも一苦労…だけど凌哉くんに自分がくっついて離れないみたいでちょっと嬉しい。







「まずは…第二体育館に行けだって」

「OK!」


私と凌哉くんは走って第二体育館を目指す。





タタタタタ…!


後ろから足音がして振り返ってみると、樹里と絢人カップルが私達を追い越そうとしていた。


さすが体育会系!






「あれ?こっちでいいんだよね?」

「多分…みんなについていくしかないな」


うちの学校に来るのが初めての2人は、第二体育館の場所をイマイチ把握してない為…地図を何度も見ていた。


足が速い2人でも、場所がわからないからこっちがまだ有利かな。

春子と圭吾カップルもすぐ後ろに来ていて、なんだかイチャイチャながら走っていた…


周りにいるカップルもみんなイチャつきながら走ってる…

優勝することが目的というよりも、楽しみながら参加してる感じかな…


ということは…こんな張り切ってたら本当に優勝しちゃってこともありえなくはないってこと!?







「どーした沙世?」


走るスピードを少しだけ緩めると、凌哉くんは私の顔を覗き込んだ。






「え?あー…えっと………そんなにダッシュして行くこともないかなって」


手錠をかけられていない方の手で頭をポリポリとかくと、凌哉くんは眉間にシワを寄せて怖い顔をした。





「お前のペースに合わせてこれでもめちゃくちゃ遅く走ってんだよ。これ以上遅いとマジでイライラするんだけど」

「ご、ごめん!」


走るスピードを戻して、私達は第二体育館に向かった。







「ベストカップル参加の方々~♪第一の試練は『レゴブロック作成』でーす!2人で協力して見本通りにブロックを組み立て下さいね~」
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