オオカミくんと秘密のキス
凌哉くんの顔を見ると優しく笑ってくれた。





「うん!」


なんだかちょっと元気でたよ。

凌哉くんの存在が私をいつも勇気づけてくれている…

本当にありがとう…



クイズ大会は計算や歴史の問題が多く、結局私の出る出番はなく凌哉くんの大活躍だった。


そして、私達は次々にステージをクリアしていったが、春子と樹里と絢人が仲直りできるようなキッカケはなく…

とうとう最終ステージになった。






「これが最後の競技になります!最終ステージは…超難関アスレチックだー!!!」


最終ステージは校庭で、スタート時点に戻って来る形になった。


まだゴールしたカップルはいないみたいで、私達3カップルが先頭…

なのに空気は冷めきってきて、なんとも言えない気まずい雰囲気が漂っている。



もうすぐゴールなのに…全然嬉しくないし楽しくないな。

凌哉くんと参加してる事は楽しいけどさ…


ちらっと春子と樹里を見ると、2人共そっぽを向いてお互いを見ないようにしている。



これじゃダメ…絶対ダメだよ。






「最後はカップルの女性だけの参加になるので、手錠を外してくださーい!」


イベントの係の生徒が、空箱を持って私達に近づいてきた。





「女子だけの参加?」

「最後の最後は…女子にかかってるってことね」


春子と柳田くんは顔を見合わると、手錠をそっと外して空箱にポンと入れる。



女子だけの競技なんて…急にドキドキしてきちゃった。

だって優勝できるのは私にかかってるってことでしょ?

それにアスレチックとか…苦手なんだよな。しかも超難関とか言ってたし…





「頑張れ樹里!」

「任せて~こんなのチョロイって」


手錠を外すと、樹里と絢人は余裕か笑みを浮かべて軽いストレッチをしている。




樹里は得意そうな競技だよね…

難関でも楽勝なんじゃないかな。






「沙世じゃ無理だろうな」


隣でボソッと言う凌哉くんに、私は口を尖らせた。




「どーせ無理ですよ!」


私はそのまま手錠を開けて外すと、凌哉くんはクスクス笑う。





「1位になれなくてもいいよ。ただ怪我だけはすんなよ」

「凌哉くん…」


ほら…

そうやってなんだかんだいつも優しいんだから…





「面白いもんが見れそうでワクワクしてるよ」

「…」


この人…優しくなったり意地悪になったり、本当に忙しい人だな。






「沙世ー先行っちゃうよ」

「あっ…」


スタートラインに立つ樹里が、私を待っていてくれて手招きしていた。




「い、今行くー」


慌てて樹里のところへ行くと、先にスタートしていた春子の背中が見えて私達よりも少し先を走っている。







「ちょっと春子っ!!!」


スタートすると樹里は走って春子に近づき、いきなり喧嘩口調で話しかけた。





「なによ、話しかけないで」

「先にスタートするとか…超感じ悪くない?私はともかく…沙世がかわいそうでしょ」


樹里のその言葉に春子は走っている足を止めて立ち上がり、かなり怒っている表情を見せた。

私が2人に近づくと、お互いにらみ合って一歩も引く様子はない。




あ、あの顔は2人共キレたな…

やばいよ。まじでヤバイ!





「マジでうるさい女っ!昔っからそうだったよねっ…つーか私が先にスタートしようがあんたには関係ないじゃん!」
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