オオカミくんと秘密のキス
明日何着てこうかな~

洋平と出かけるだけだけど、S町のショッピングモールは結構栄えてるからそれなりにちゃんとしていかないとな…


その夜はそんな感じで更けていった…

尾神くんからの連絡はなかった。









「お金ちょーだいっ!チケット買ってくる!!」

「ちょっと待ってよ」


翌日。私は午前中から、予定通り洋平と映画館に来ていた。日曜日だということもあり映画館のフロントはかなり混雑している。

人ごみの中で洋平に急かされながらも、財布からお金を出す私。





「あれ?隆也(りゅうや)じゃん!」


すると、洋平が人混みの中から誰かを見つけて手を振った。その方向に目を向けると、洋平と同い歳くらいの男の子がこっちを見ていた。





「友達?」

「そう同じクラス!ほら前に話した春に転校して来た奴だよ!」

「ああ」


よく洋平が話してる子か~





「洋平!」


その隆也くんという子がこっちに走って近づいて来ると、洋平の名前を呼んだ。





「偶然だね!洋平も映画来てたんだ」


子供だけどすごく整った顔をしている隆也くんは、無邪気な顔をして嬉しそうに洋平に話す。

まだ隆也くんのことは全然知らないが、見た目の印象からしていい子だということはなんとなくわかった。




「おう!姉ちゃんと来たんだ!!」

「そっかぁ!ぁ…こんにちは…」


洋平が私の腕をぽんと叩くと、隆也くんは恥ずかしそうに私に頭を下げる。


かわいい。人見知りなのかな?

洋平は全く人見知りしない子だから、子供のこういう所見ると新鮮かも。




「こんにちは!いつも洋平から隆也くんのこと聞いてたんだ~今日はお母さんと来たの?」

「ううん、兄ちゃんと…」

「そっか~お兄さんど…こ………」


ふと、さっき隆也くんがいた方向に目を向けた時だった…そこには思ってもいなかった人物が私を見つめていた。



う、そでしょ…

まさか…




「あ、兄ちゃん!」


隆也くんが手招きして呼ぶと、その人は無表情のままこっちに近づいて来る。


私が会いたかったような…

会いたくなかったような…


もうおわかりだろう。

そんな奴はあいつしかいない…


…尾神くんだ。



洋平の友達の隆也くんが尾神くんのお兄ちゃん?そんなことってある!?





「凌哉兄ちゃん♪この間はありがとな~」


洋平は尾神くんを見るなり、馴れ馴れしく話しかけてお礼を言っている。







は?この間はってどういうこと…??
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