オオカミくんと秘密のキス
私と洋平のやり取りにぷっと笑う尾神くん。弟といるところなんて初めて見せるしすごく恥ずかしいな…





「はいお金。何かあったら連絡してよ」

「へーい」


本当にわかってんのかこいつは…隆也くんはしっかりしてていい子そうだけど、こい
つは能天気で調子乗りだから心配だ。





「行ってくるね!」

「ああ、行って来い」


隆也くんの頭をぽんと撫でる尾神くん。その顔はとても優しい…




「お前らはモンスターをウォッチして来い。俺は沙世をウォッチしてるから」

「な゛…」


尾神くんの言葉を聞いて、弟達は意味がわからない様子で首を傾げている。




「いいのいいの!なんでもないから行って行って!」


洋平と隆也くんの背中を押すと、2人は仲良くチケット売り場へ行った。




「ちょ、ちょっと!」

「…何?」

「弟達の前で変なこと言わないでよねっ」


学校だけじゃなくて、プライベートでもオオカミのドSスイッチが入ったか!





「変なことじゃねえだろ。照れんなよ」

「て、照れてなんかっ…」


尾神くんと2人きりなって、更に恥ずかしさが増す。


こんな展開…誰が予想してただろう…

尾神くんからの連絡をずっと待ってたけど、連絡よりも先に会っちゃったよ…





「…とりあえず何か飲むか。どっか店入ろうぜ」

「え…」


それって…なんかデートみたい…




「ほら行くぞ。早くしろ」

「う、うん…」


私と尾神くんは映画館を離れ、フラフラとモール中を歩きカフェを見つけて中に入った。




「…」

「…」


奥行のあるカフェの店内はカウンターとテーブル席があり、私と尾神くんは向かい合わせのテーブル席に座り飲み物を頼んだ。


こんなふうに男の子とカフェに入るなんて初めて…

向かい合わせの席に座ってるだけなのに、こんなにドキドキするんだな…



それに尾神くんの私服姿がすごくかっこいいから、余計にドキドキしちゃうよ。

尾神くんはショールカラーのカーディガンを羽織り、ボトムスはオリーブ色のカーゴパンツを履いていて、全体的にすっきりとしたラインで大人っぽい服装だった。





「アハハ…」


すると、隣のテーブルに私達と同い歳くらいのカップルがやって来る。まだ付き合いたてなのかそのカップルは初々しく楽しそうだった。

彼女の方の服装は、春らしい花柄のワンピースに黄色いカーディガンを羽織っていてとても女の子らしい。



あんな女の子っぽい服が似合っていいなぁ…

尾神くんもきっとあんな感じの女の子の方がいいと思うよね…


私が着ている服は、白の緩やかなスカートに濃いめの紺色のカーディガンを着ている。ウエストのベルト部分にさりげなくリボンがついてるけど、女の子らしさはそれが精一杯。

一応スカートを履いているが、クール顔の私は女の子っぽい服が似合わないのだ。



それにしても、こうやってカップルを見るとちょっと羨ましいなぁ…

今までかっこいいとかちょっといいなと思うくらいの人はいたけど、付き合いたいとまで思う人はいなかった。

彼氏ってどんな感じなんだろ…想像つかないなぁ……




「ジロジロ見過ぎだバカ」

「え?」
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