オオカミくんと秘密のキス
色んな顔を見せてくる尾神くんに時々困ったりもするけど…全部いいと思ってる自分もいるんだ。

新しい尾神くんに会えるたびに、一歩近付ける気がするの…

もっと新しい尾神くんの顔を見せて欲しいよ…






「…映画終わるのって何時だっけ?」


お互いの飲み物もなくなってきた頃、尾神くんは自分のスマホで時間を見た。




「確か12時過ぎ…だった気がする。あと1時間近くあるね」

「まだそんなにあんのか…」


あと1時間もどうやって時間潰そう…

このままカフェにいるのもなんだし、弟達よりも先にお昼食べるわけにもいかないし…




「お前はなんか見たいもんとかないの?」

「え?見たいものって?」

「買いたいもんとかってこと」


ああ、買い物か…そうだなぁ…




「あ。もうすぐ春子の誕生日だからプレゼント見たいかも」

「春子って…小川のこと?」

「そう!今月の25日が誕生日なんだよ~」

「まあ、春子って名前だから当然春生まれなんだろうな」


フッと鼻で笑う尾神くんは、その場から立ち上がり伝票を手に取ってレジに向かう。





「えっ、ちょっ…待ってよ~」


少し残っていたアイスティーを全て飲み干し、私は自分のカバンを持ってレジにいる尾神くんの元へ走った。





「20円のお返しです。ありがとうございました」


レジに着いた時にはすでにお会計は終わっていて、尾神くんは店員さんからおつりを受け取っていた。




「ごめんね、いくらだった?確か350円くらいだっけ?払うよっ」

「いいよそれくらい」

「良くないって」


財布を出して小銭入れを開けると、尾神くんは私の手を掴んで睨んだ。




「いいって言ってんだろ。おごってやるってことだよ」

「でも…」


尾神くんが私の手を掴む手にめちゃめちゃドキドキしてしまう。




「俺の好意なんだから払うなんて言うな。ここまで言ってんのにお前が払ったら俺がダセーだろ。おとなしく財布しまえよ」

「う、うん…ありがとう…ごちそうさまです」


尾神くんの気持ちを考えたら、ここで意地になって払うのはかわいくないんだろうか…

男の子に甘えるというのは難しい…
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