オオカミくんと秘密のキス
「もうお昼過ぎてるもんね。何か食べようか」

「俺ハンバーガーがいい!なあ、隆也もハンバーガーがいいよな?」

「うん…あ、でも…」


大きく頷いたあと、隆也くんはすぐに私と尾神くんの顔色をうかがった。




「兄ちゃんと洋平のお姉ちゃんはハンバーガーでいいのかな…」


ビクビクする隆也くんは私達から目をそらした。


隆也くん…いつもこうやって周りの顔色をうかがってるのかな。両親の離婚と兄弟が別々に引き取られたことで、自然に周りに気を使うようになってるのかも…

大人ばかりと生活してるとそうなってもおかしくない。




「俺もハンバーガーでいいよ」


尾神くんはバーカと言って、隆也くんの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。それを見て私はしゃがみ込んで隆也くんと目線を合わせた。





「私もハンバーガー好きだからいいよ!」


そう言うと隆也くんは恥ずかしそうに笑い「うん…」と返事をする。




「じゃー行こうぜ!隆也なに食う?俺は照り焼きかなー」


洋平は隆也くんを引っ張って歩き始めた。私と尾神くんは後ろ姿を見ながら2人の後をついていく。

2人は本当に仲良しだ。隆也くんも楽しそう…

隣にいる尾神くんを見ると、そんな隆也くんを見て安心したように微笑ましい表情をしていた。


ハンバーガーショップがある階は映画館のある階より下にある為、私達はエレベーターに乗って下の階へ向かう。

乗り込んだエレベーターは混雑していて、私と洋平、尾神くん兄弟はバラバラの位置になる。

体を動かすのも一苦労の中、私は一番奥にいた尾神くんと隆也くんを見た。混雑したエレベーターの中で隆也くんは尾神くんの服を掴んでいた。



隆也くん…お兄ちゃんのこと好きなんだね……当たり前だけど可愛い。

こうやって見るとすごくいい兄弟だなぁ。


それに比べてうちの洋平はというと…

ボタンの前にいる洋平は、次エレベーターの扉が開いた時に開くボタンを押したいのか、ボタンに指を置いてスタンバイしている。


まあ、これはこれで可愛いか。

私が洋平の頭をポンと撫でると、洋平は不思議な顔をして振り向いた。私は「なんでもないよ」と言った。




ハンバーガーショップに着くとそれぞれのハンバーガーを購入して、店内に座って4人でランチ。

弟達は必然的に隣同士になるから、私は自然に尾神くんと隣の席に。向かい合わせよりはまだいいけど、食べてるところってあんまり見られたくないかも…




「ねえ、このあとゲーセン行っていい?」


口に照り焼きバーガーのソースをつけた洋平が、いつも私にねだる時の口調で聞く。



「ゲーセン?」

「そ!ここのゲーセン大きいんだよ!!いいだろ?ちょっとだけ!もらったメダル早速使いたいんだよっ」

「その前に口拭きな」


洋平はトレーに乗ってるナプキンで雑に口を拭く。




「はい拭いた!ねえいいだろ!!?」


目をキラキラさせる洋平。それを見て隣で尾神くんがクスクス笑ってる。




「別に私はいいけど…」

「凌哉兄ちゃんは?ゲーセン行ってもいーい?」


洋平が尾神くんにそう聞いた時、隆也くんの顔もゲーセンに行きたがっているように見えた。フライドポテトを食べている手を止めて、隆也くんは尾神くんをじっと見ている。




「いいよ」


飲み物を飲みながら言う尾神くんを見て、隆也くんの顔がパッと明るくなる。




「ありがとうぅー!やったな隆也!」

「うんっ!」


隆也くんに抱きつく洋平はニシシシと笑い、隆也くんも嬉しそうだった。


この2人いいコンビになれそうだな。今は暖かく見守ってあげよう…

隣にいる尾神くんに緊張してボソボソとハンバーガーを食べながら、心の中でそう思った。







♪♪♪~


ランチを食べたあと、騒がしいゲーセンにやって来た私達。弟達2人はすぐさまお目当てのゲーム機へ走って行き、私と尾神くんは近くにあったベンチに並んで座った。

色んなゲーム機の音でうるさい中、洋平のはしゃぐ声が聞こえてきた。




「あいつら元気だな」

「そうだね」
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