オオカミくんと秘密のキス
子供の体力ってハンパないよ。



「隆也くん…楽しそうで良かったね」


洋平と一緒にゲームをやりながら、よく笑った顔を見せる隆也くん。座っているベンチから2人の様子を見て、私は微笑ましい気持ちになっていた。




「俺と2人っきりだったら、隆也はあそこまで楽しめなかっただろうな。多分俺に気を使ってゲーセンに行きたいってことも言わなかったと思う」

「尾神くん…」

「隆也は今は俺にさえ気を使うんだ。いつも顔色うかがってるしわがままも言わない。それが痛々しい見えて、マジでかわいそうになってくる…でも俺も器用な方じゃないから、どうしていいかわかんないんだよな」


尾神くんの横顔はとても苦しそうで、お兄ちゃんの顔をしていた。




「さっき飯食ってる時…洋平が俺にゲーセン行きたいか聞いただろ?あれは多分隆也の代わりに聞いてくれたんだよな」

「そうなのかな」


私もちょっとそう思ったけど、洋平は多分自然に尾神くんに聞いただけだろうな。そこまで意図的に聞いたわけじゃないと思う。





「俺隆也のこと洋平に頼ってる部分ある。それってダメだよな…兄貴として俺がなんとかしなきゃいけないのに」

「そんなことないよ!洋平で良かったらたくさん頼ってよ。あいつは隆也くんとで重荷に思ってることなんか何一つないんだから…それに私だってできる事は協力するよ」

「え…?」



頼る人がいるんだから…頼ってたっていいんだよ…




「私も全面的にサポートするから!って言っても何ができるかわかんないけど…とにかく洋平と隆也くんは友達なんだし、何かしら出来ることがあると思うんだ!だから…」


だから…








「一人で抱えないでね」

「……」









ちゅ…










え。







突然尾神くんの唇が私の唇に軽く触れる。



「なっ…ちょっと!ここどこだと思ってんのっっ」

「ゲーセン」

「そうじゃなくて人がいっぱいいるのに!しかも近くに弟達いるし!!!」


見られたらどーすんのっっ!!!




「ゲームに夢中だからこっちなんて見てねーよ。それに何?ここじゃなくて人がいないとこだったらキスして良かったの?」

「くっ……」


こいつっ……もう協力してやらないからね!でも隆也くんは何も悪くないか…




「今後一切キスはしないでっ」

「はいはい」


軽くあしらわれてるし。私本気なんですけど…





「…まあ何にせよ……今日お前と洋平に会えて良かったよ」


そう言うと、尾神くんはふわっと微笑んで隆也くんを見つめていた。


その笑顔を見ると、私の怒りは消え私も弟達の方に目をやった…




今日はすごく楽しかった…

尾神くんのことまた知れた気がする…


私もね、

今日尾神くんと隆也くんに会えて良かった…



ありがとう…




その日の夜。尾神くんからLINEがきた。


尾神くん{今日はありがと。今夜から隆也と同じ部屋で寝る。おやすみ



尾神くんからの初メールに、ちょっと顔がにやけた。


ちょっとずつ…隆也くんと距離を縮められたらいいね。

その夜は、尾神くんと隆也くんが一緒に寝ているところを想像して眠りについた。
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