オオカミくんと秘密のキス

キスはスパイス

「くじで決めたグループに集まって、当日作るカレーの具材やトッピングとグループ内で係を決めて下さい」


数日後の6時間目のHR。来週の遠足に向けてグループ分けが行われた。

遠足の行き先は牧場。昼食にグループごとにカレーを作るイベントがあるらしく、くじ引きで男女3人ずつの班が決まった。

私の班は…一言でいうと微妙である。





「カレー作り!?なんで牧場に行ってわざわざカレー作らされなきゃなんないの?」


グループの女子の一人はタラコ唇が特徴の女子で、なんとも言えない存在感と貫禄のあるふくよかな人だった。

もう一人の女子はメガネをかけていて、大人しくて頭良さそうな子。男子はまだ2人しか来ていなかったが、目立つタイプではなく物静かな2人だ。



この人達と同じグループか…

失礼だけど全員名前わかんないや。


一応グループで集まってそれぞれ椅子に座っているのだが、なんだか皆まばらで少し距離があり気まずい…


春子と同じグループが良かったな。


ちらっと春子のグループを見ると…目立つタイプの男女達の集まっている中に春子がぽつんと浮いていた。



春子も気まずそう…

後で励まし合おうね!今はお互いがんばろ。


一瞬春子と目が合った私はニッと笑って手を振った。春子は今にも泣きそうな顔をして、私に手を振り返した。




ギ…


びくっ




その時私の座っている隣の席の椅子を引く音がして、思わずびくっと反応してしまう。




あ…

この人…


とっさに横を向くと、クール男子のあの尾神くんが私の隣の席に座っていた。



もしかして…尾神くんも同じグループ?


嘘。

なんかますます微妙な班になっちゃったな…






「これで全員揃ったわね。んじゃカレーの材料決めましょうか」


タラコちゃんが仕切り始め、私達のグループはさっきよりも距離を縮めて座る。


あれ?

さっきはめんどくさそうだったのに、意外とリーダーやりたいタイプだったのかこの人…

私みたいなタイプの人間からすれば、こういう人がいてくれて本当にラッキーだけど。






「カレーといえばビーフ??」


タラコちゃんが首を傾げる。




「あの…うちはポーク派ですけど」


メガネちゃんが控えめに言う。



そう言えば…カレーってそれぞれ家の味があるよね?入れる具材とかもその家庭によって違う気がするけど…?

ちなみに私の家はチキン派だ。





「…全部入れれば?」


はい…?


尾神くんがひじをつきながらボソッと言う。低くくて少ししゃがれていて男らしい声だった。




「ぜ、全部って…牛、豚、鶏ってこと?」

「そ。その方が斬新だろ」


あくびをして眠そうな表情の尾神くんはてっきり無口な人だと思ってたのに…話し合いには意外と口を出してきた。





「いいねそれ。どうせだったらそうしよ♪じゃあ、あとはじゃがいもとか入れて…トッピングはどうする?」


タラコちゃんの問に私達グループ全員がうーん…と考え込む。



私まだ一度も喋ってないよ…

ここで何かいい案出さないと、また見た目通り無口で無愛想とか思われちゃうかも。


別にいいんだけど…いいけどさ…

尾神くんが結構話すタイプで見た目と違うから…なんとなく…自分もギャップ感を出したいみたいな…?




「キムチだと普通か?」

「うーん…個人的にはチーズ乗せたいが」

「チーズいいね♪」


う…大人しめの男子2人も会話に入ってきたよ。

とうとう話してないの私だけだ。





「萩原」


…………え!



話すタイミングを見つけオロオロしていたら、隣にいた尾神くんが私の名前を呼んだ。



どうして名前知ってるの…?

話したことないのに…





「お前いつもカレーにトッピングとかすんの?」

「えっ、えっと…そうだなぁ…」


ここだ!

私が話すタイミングは!







「な、納豆…とか?」
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