オオカミくんと秘密のキス
「……………」


私の言葉を聞き班のみんなが私をポカーンと見つめていて、まるでチーンと音が鳴っているようだ。



や、やば!

私ったら何か言わなきゃと思ってサラッと言っちゃったけど…納豆は普通じゃなかったかな?





「あ、でも納豆は好き嫌いあるし…やっぱりやめ…」

「いいんじゃね」


あれ?


尾神くんはまたぼそっと言って、体を伸ばした。




「納豆いいね♪私好き」

「私もです!」


女子2人は私に笑顔を向けてくれて、男子達も同じ顔をしていた。



良かった…

みんな賛成してくれた。


尾神くんのおかげ…かな?

さっき話しかけてくれたから私もみんなと話せたんだし…





「んじゃトッピングは納豆ね。これで決まり☆」

「あのぉ…私の家マンションなんですけど、1階がスーパーなので買い物係やりますよ」

「そ?んじゃお願い」


メガネちゃんが、自分から進んで買い物係になってくれた。





「本当にお願いしていいの?ジャンケンとかで決めた方が…」

「いいんですよ。私買い物好きなので♪」


ニコッと微笑むメガネちゃんに、私もつられて笑い「お願いします」と軽く頭を下げた。タラコちゃんは大人しい男子2人となにやら盛り上がって話してる。

なんかさっきは微妙だと思ってたけど、結構いいグループになれそうかも…





「最初はぐー…」

「っ?」


すると急に横から手が伸びて来て横を向くと、尾神くんが手を軽く握りジャンケンのポーズをしていた。





「…ジャンケンポン」

「…ぽん」


わけがわからなかったが、とりあえず尾神くんとジャンケンをした私。

結果は私の負け。





「萩原の負け」

「そうだね」

「じゃ、お前準備係やれ」

「はい?」


何それ…準備係って何!!?




「そんな係あったっけ?」

「うん。当日カレー作りの準備をする係だよ。萩原さんやってくれるの?なら私リーダーやるよ」

「えっ?」


さっきメガネちゃんは買い物係引き受けてくれたし、タラコちゃんはリーダーになってくれた…

カレー作りの準備ってことはキッチン用品とかを準備するんだよね?男子だと慣れてないからわからないかもしれないし…やるとしたら私しかいないのか。





「私やります」

「お。ありがとう!さすが元ヤン!」

「う…」


タラコちゃんから明るくそう言われた。お礼を言われたことは嬉しいが、元ヤンと言われたことは全然嬉しくない。






「…ぷ」


隣にいる尾神くんがそんな私を見て吹き出して笑う。私がキッとにらむと尾神くんはニヤニヤとまた笑った。



こいつ…わざとやったでしょ!?

見た目と違ってやってること全然クールじゃないじゃん!





「材料や係が決まったら、自分の席に戻ってください」


クラス委員のその言葉で、生徒達は自分の席に戻って行く。私達のグループも解散し、私も席を立って戻ろうとした時…




「萩原」

尾神くんに呼び止められた。




「なに?」

「準備係になっちゃったな」


意地悪な笑みを浮かべる尾神くん。私はムッとしながら口を開く。




「誰のせいよっ」

「ハハ」


からかうような笑顔。憎たらしいはずなのに、そんなふうに笑う尾神くんもすごくかっこいい。
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