オオカミくんと秘密のキス
その夜は尾神くんのことを考えながら眠り、翌日は早く目覚めてしまった。よく眠れたというわけではないのに目覚めはすごく良くて、とてもスッキリしていた。

支度をして荷物をまとめてそろそろ出ようかと思った時、私のスマホが震え画面を見ると尾神くんからLINEだった。




尾神くん{おはよ。鍵開けておくから勝手に入って来て。


朝からの尾神くんのLINEを見て、胸が締め付けられるくらい熱くなる…これから尾神くんの家に行くのかと思うとなんだか緊張さえもしてくる。

私は「了解」と返事をしたあと、家を出て
近所のスーパーに寄って買い物をしてから
尾神くんの家に向かった。





う…デカい…


尾神くんの家に着いて目の前の大きな家を見ると、昨日同様その迫力に息をのむ。

鍵開けておくなんて言ってたけど、ここに入っていくのは結構勇気がいるな…


私はゆっくりと尾神くんの家の敷地内に入り、小走りで玄関まで行くとインターフォンを押した。




ピンポーン…


…ガチャ



チャイムがなり止やんですぐに玄関のドアが開き、昨日よりもきちんと髪をセットした尾神くんが顔を出す。




「お、おはよう」

「入って来ていいって言っただろ」


尾神くんは黒いスウェット生地のラフなジャージを来ていて、それがすごく似合っていてかっこいい。




「いや…でも…よそ様の家に勝手に入るのはどうなのかなって…」


ポリポリと自分の頬をかくと、尾神くんはふっと鼻で笑う。





「入れば?」

「あ、うん…お邪魔します」


家の中に入ると尾神くんは先にリビングの部屋へ入って行き、私は玄関で履いているパンプスを脱いだ。




「具合はどう?」

「もう平気」


リビングへ入ると、尾神くんはキッチンにいて冷蔵庫を開けていた。私は荷物をリビングの端に置き、スーパーで買った物を持ってキッチンへ行った。




「何飲む?」

「いいから寝てなよ…私やるから…」

「もう大丈夫だってば」

「無理しないでちゃんと寝なさいっ…」


尾神くんを引っ張ってソファーに無理矢理座らせると、私は体温計を尾神くんに渡す。




「終わったら言ってね」

「だからもう熱ないんだっつーの」

「いいから!」


強引に体温を計らせると私は一旦キッチンへ戻り、スーパーの袋から食材を出して冷蔵庫にしまう。

そして髪の毛を持ってきたシュシュで束ねたあと、お米を研いで炊飯器に入れた。





「ん…」


すると尾神くんが私のいるキッチンに来て、差し出した体温計を見てみると36.8度となっている。




「あれ?下がってる」

「だからそう言ってるだろ」

「でもダメ!まだ安静してた方がいいって。まだ声がガラガラだしぶり返さないようにしないと」

「えー…」


嫌そうなをする尾神くんを、再び引っ張ってソファーに連れていき無理矢理寝かす。





「今ご飯作るからちょっと待ってて。あ、お母さんがはちみつ大根作ってくれて持ってきたけど食べる?」

「うん」

「じゃ今持ってく……っ!」



グッ…




ソファーから離れようとする私の腕を掴む尾神くんは、何か言いたそうな顔をして私を見つめた。






「な、何?」

「…今日はスカートじゃないんだ?」

「え?」


尾神くんは私の履いている白いカラーパンツを見て、ボソッとそう言った。




「あ、うん…今日はね」

「何で?昨日はスカートだったのに…」

「だって…1日看病するから動きやすい格好の方がいいかなって…」


本当はスカートにしようか迷ったんだけどね…

尾神くんと会うんだからスカートでキメたいってちょっと思ったんだけど、今日は遊びに来たわけじゃないし…散々迷った結果、結局カラーパンツにしたんだっけ…






「ふーん…残念」


私の履いているカラーパンツから目をそらす尾神くん。




「…どうして?」

「…そんな事男に聞くもんじゃねえよ」

「や、ヤラシー」


私は掴まれている尾神くんの腕を振り払い、ふんと言ってキッチンに行く。




「まだ何にも言ってねーだろ」

「う、うるさい!」


訳わかんないこと言ってるけど、とりあえず尾神くんの具合が良くなってよかった…熱も下がったし顔色も昨日よりは調子よさそう。
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