オオカミくんと秘密のキス
「やばっ!」


寝過ごしちゃった!晩御飯作らないと!!



飛び起きた私は、慌てて部屋を出てキッチンへ向かう。






「あ、姉ちゃん!…もしかして今起きたのか?」

「よ…洋平!?」


てっきりリビングにいると思っていた洋平は玄関にいて、靴を脱いでいる途中だった。





「あんたどっか行ってきたの?」

「出かける時に声かけただろ?それにさっきLINEしたのに見てないのか?」

「えっ…」


ポケットからスマホを出すと確かにLINEのがきているようだ。





「本当だ…」


全然気づかなかった…さっき時計見た時は慌ててたし全く気づかなかったよ。





「ごめんすぐご飯作るから!てゆうか、あんたどこに行ってたの?」

「隆也んちだよ!ご飯は食べてきたからいらない」

「っ!」


ご飯食べてきたって…





「どこで!!?」

「だから隆也んちだってば!今日は隆也の母ちゃんが休みだから遊びにおいでって誘われたんだよ。それでちょっと早いけど夕飯ごちそうになった♪姉ちゃんの分ももらったぞ」


玄関のわきに置いてある紙袋を指さす洋平。紙袋を覗いてみると、中にはタッパーに小分けになったおかずがたくさん入っている。






「これ…凌哉くんのお母さんから?」

「そ。姉ちゃんによろしくだってさ~」

「あんた一人夕飯呼ばれてお土産までもらって帰ってきたの?」

「うん!今隆也と凌哉兄ちゃんに送ってもらった!…で、今下で凌哉兄ちゃんが姉ちゃんの事呼んでるから呼びに来たんだよ」

「えっ…」


呼んでるって…






「凌哉くんまだいるの!?」


洋平を送ってくれて帰ったんじゃないの?




「下にいるよ。待ってるから早く行きなよ」

「え、ちょ、ちょっと待ってよ…」


どうしよう…

今はあんまり会いたくないんですけど…





「ほら早く早く」


ガチャ


脱ぎかけた靴をまた履く洋平は、私の手を引っ張って玄関のドアを開けた。






「あ、凌哉兄ちゃん!」


ドアを開けると、外には凌哉くんと隆也くんが来ていて私はとっさに後ずさりしてしまう。





「待ってんの飽きたから来ちゃった…」


凌哉くんの私を見る顔は私を見透かしているように見えた…今さっきまで私が寝ていた事なんて凌哉くんは知らないはずなのに、なんかそれを気づいているような感じだ。






「隆也ちょっとあがれよ!この前言ってたゲーム見てくれよ」

「うん!」


凌哉くんの隣にいた隆也くんが家に入り、洋平と部屋に行ってしまった。玄関には私と凌哉くんの2人きりになる…






「………」


カチャン…


玄関に入ってそっとドアを閉める凌哉くんの行動が、少し怖くなってしまう。私は目の前にいる凌哉くんに怯えながらもその場で下を俯いた。






「…洋平がお邪魔しちゃってごめんね。お土産までもらっちゃって…本当にありがとう…」

「…別に」

「お母さんにお礼言っておいてね」

「うん…」


凌哉くんの低い声のトーンに体がビクッとなる。勇気を出して自分から話しかけたけど、気まずい雰囲気は変わらない。
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