オオカミくんと秘密のキス
やっぱり用事があるって嘘ついたことバレてるのかな…だから怒ってるの?


洋平の部屋からキャッキャとはしゃぐ声が聞こえてくる中、玄関にいる私達はしーんとしている。






「…どうした?」


しばらくの沈黙のあと、凌哉くんはそう言って私の顔を覗こんできた。



「…なにが?」

「お前何かあっただろ?」

「えっ…」


てっきり怒っているのかと思ったけど、凌哉くんはすごく心配そうな顔をしていた。その顔を見た私はものすごい罪悪感と悲しい気持ちがこみ上げ、気がつくと目から涙がこぼれてきた。

凌哉くんはそんな私を抱きしめてくれて私はそのまま凌哉くんの胸で泣いた…



凌哉くんに好きって言えたらいいのに…

今ここで言えたら全てが解決する……そんな気がする。

だけど涙が止まってくれない…




凌哉くんはその日特に私の話には触れずに、何も言わなかった。泣いている私を時折なだめてくれたあと隆也くんと帰って行った。

落ち着いた後に私は凌哉くんのお母さんが洋平に持たせてくれたご飯を食べ、洋平に凌哉くんの家でのことの聞いたりして気をまぎらしていた。



凌哉くんはあえて何も聞かなかかった。それはきっと、私から話してくれるのを待ってるんだよね…

明日ちゃんと話そう。そして…凌哉くんに告白しよう…










翌日


いつもより早く起きてしまった私は、春子に「先に行くね」と連絡をしていつもよりも早めに学校に向かった。

毎日通っている通学路をゆっくりと歩き凌哉くんの事を考える…



人を好きになるってこんな感じなんだ…

毎日のように会ったりとか連絡取り合ったりしてるのに、また会いたくてたまらなくなる。

凌哉くんの事考えると胸がキュとしめつけられて、これから凌哉くんの正式な彼女になれるんだと思うと顔がにやけそうになってしまう…


こんな事考えてたら普通は自意識過剰だけど、私の場合はもう告白されてるんだよね。だから調子乗ってますが許してください…

凌哉くんと付き合えば、もうあの女子2人の事なんてどうでもよくなるよね。気にしないようにしよう…






「よ!」


学校が見えて来た距離のところで後ろから男子に声をかけて、振り向くとそこには柳田くんがいた。





「おはよー」

「はよ」


ニコッと笑う柳田くんに挨拶をすると、柳田くんは自然に私と並んで歩き始める。





「小川は?今日は一緒じゃないの?」

「残念でした~今日は私1人です!早く起きちゃったから先に来たんだ」


早くといってもいつもより10分程早く行動している程度。けれど朝10分間早く家を出るのは簡単なことではない。




「そっかなるほど!」

「柳田くんも今日はひとり?」


いつも凌哉くんと一緒に来ることが多いのに…



「凌哉の奴が今朝は先に行っててってさ。多分ギリギリに来ると思うよ」

「そう…」


ギリギリに来るのか…今日凌哉くんと話せるチャンスあるかなぁ…

そんなことを考えながら私は柳田くんと2人で学校に向かった。






がやがや


学校に着くと、下駄箱で上履きに履き替えて柳田くんと並んで教室まで歩く。





「え?春子と連絡先交換したの!?」


私達の会話は、柳田くんの最近の恋愛の進展の報告になっていた。




「この前したよ。あれ?小川から聞いてないの?」

「聞いてないよー」


なんとなくだけど、春子と柳田くんは最近話す回数が増えてきたとは思ってたけど…そんなところまでいってたとは思ってなかった。




「女っていちいちそういうの友達同士で報告するんじゃないのか?」

「うーん…私達はそうでもないよ。どっちかって言うと事後報告が多いかな?ま、今までお互いにちゃんと恋愛したこと無いから報告も何もなかったけど」


だからこそ、私達はお互いに報告し合うことが照れくさいのかも。




「そんなもんなのか。凌哉は俺にすごい報告してくるけどな…だから俺萩原の事はよく知ってるよ♪」

「え!?ちょっと!凌哉くん私のこと何て言ってたの!!?」

「それは言えないよ」


ケラケラと笑う柳田くんの声が響く中、私達はほぼ同時に教室に入った。すると、教室にいるクラスメイト全員が一斉にこっちを見てくる。




なに…?


がやがやうるさかった教室は一気に静まり返り、私と柳田くんはその場に立ち止まって固まってしまった…



なにこの空気…

一体何があったの…?








「…な、なんだこれっ…」
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