オオカミくんと秘密のキス
「中華街だ~私初めてなんだ」

「なら良かった。たまに家族で横浜来るから、俺結構詳しいんだ」

「へえ~」


私達は中華街に足を踏み入れて、凌哉くんがオススメだというお店で大きな肉まんを買い、食べ歩きながらぶらぶらと中華街を歩いた。






「あ、パンダ」


途中でパンダグッズばかり売っている雑貨屋を見つけ、私は立ち止まる。





「…パンダ好きだったっけ?」

「う…」


凌哉くんにその場の雰囲気に流されるなよ的な事を遠まわしに言われているのはわかったが、私は「い、いいじゃん別に」と言い雑貨屋の外にあるガチャガチャを何気なく見る。



パンダのストラップのガチャガチャか♪

これくらいならやってもいいよね。



私はカバンから財布を出してお金を入れ、ガチャガチャを回し出てきたカプセルを取り出して開けた。






「チャイナドレス着てるパンダだ~かわいい♪」


出てきたストラップを自慢げに凌哉くんに見せると、凌哉くんは無表情でそれを見ている。




「ど、どうせ無駄なことしてるとか思ってるんでしょ!?いいの!女子はこういうの好きなの!」


私はそのストラップをしばらく眺めたあと、自分のスマホを出してそのパンダのストラップを付けた。





「今日の思い出に♪」


そう言ってスマホに付けたストラップを凌哉くんに見せると、凌哉くんもポケットから財布を出してガチャガチャを回す。そして出てきたカプセルを開けると…





「それもかわいいね!」

「肉まん食ってる…」


凌哉くんが当たったのは、パンダが肉まんを食べてるストラップだった。





「俺もスマホにつけるよ」

「え…」


凌哉くんはポケットから自分のスマホを出し、その場でそのストラップを付けた。





「今日の思い出に」

「…!」


私にスマホに付けたストラップを見せてくる凌哉くんに、心臓が飛び出そうなくらいドキッとして同時にすごく嬉しかった…


早く告白しなきゃ…

向こうから一方的じゃなく、自分からも凌哉くんとちゃんと向き合いたい…



それから凌哉くんは横浜のオススメのスポットにいくつか連れて行ってくれて、あっという間に時間が過ぎていった。凌哉くんに告白するチャンスは巡ってきたのは…最後に立ち寄った所だった。





「疲れたか?」

「ううん、全然!」


夕方。公園のベンチに座りジュースを飲みながら凌哉くんと話している。



告白のチャンスが来た…!

ずっと待ってたこの時を…


あーでも緊張する~







「あの、さ…凌哉くん」

「ん?」


隣でジュースを飲む凌哉くんに、緊張しながら話しかける私。




「えっと…あ、あのね………」

「なんだよ?」

「え…えっと…」


落ち着け、落ち着け!





「私ね…凌哉くんが……」

「凌哉?」



え…




告白寸前。近くで私以外の女子の声で凌哉くんを呼ぶ声がした。

後ろを振り返ると、そこには制服を着た可愛らしい女の子が立っていた。


今…凌哉くんを呼んだのはこの子?





「妃華(ひめか)?」


凌哉くんは立ち上がってその子の顔を覗きこむように見て言うと、その女の子は嬉しそうに笑って小走りでこっちに近づいた。






「凌哉ーーーぁ!」


そして女の子は甘えたような声を出しながら、凌哉くんに思い切り抱きついた。


この子…凌哉くんの知り合い?抱きつくくらいの仲ってどういうこと…?それに…




「妃華久しぶりだな」


凌哉くんもその妃華ちゃんという子の事を抱きしめ返してる…

私は突然の妃華ちゃんの登場に戸惑い、同時に嫉妬を覚えていた。するとようやく抱き合っていた2人は離れて凌哉くんは私を見める。





「ごめん沙世。こいつ俺の幼馴染みの妃華」

「はじめましてぇー!妃華です♪」


幼馴染み?


凌哉くんに寄り添う妃華ちゃんは、にっこりと笑って私に自己紹介をした。





「…はじめまして…沙世です…」


一応私も自己紹介をして妃華ちゃんに頭を下げる。




「妃華は小学校まで俺らの地元に住んでたんだけど、親の仕事の都合でこっち(横浜)に引っ越して来たんだよ。親同士仲いいから今もたまに会ったりしてるんだ」

「私の両親も凌哉と同じ医者だから、家族ぐるみで仲いいんだよねぇ」

「へ、ヘえ…」


凌哉くんが横浜に詳しい理由がわかった。妃華ちゃんが横浜に住んでるからちょくちょく遊びに来てるんだ…
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