オオカミくんと秘密のキス
「ぁ…」
教室の窓際にクラスの男子数人がたまっている。その中でひとり、輪の中から外れて窓の外を眺めている後ろ姿…
凌哉くんだ…
どうしよう…やっぱり怖い…
「沙世。とりあえず席に座んな」
「さっきも言ったけど、今日は移動教科ばっかりだから大丈夫だよ」
私を無理矢理席に座らせる春子。そして多美子ちゃんが思い出したように言う。私は「う、うん」とやや緊張したように言った。
そうだよね…
今日は午前中までだし、幸いにも今日の科目は全部移動授業だから凌哉くんと顔を合わせることが少ないんだよね。
ガラガラ
「HRやるぞー」
教室に担任が入って来ると、生徒達は一斉にそれぞれの席につく。
うつむきながらカバンから荷物を出していると、目を向けなくてもだんだんと凌哉くんが近づいてくる気配がした…
心臓がバクバクして手が震える…席が近いのはいいことばかりじゃないなぁ…
タン…タン……
凌哉くんが私の横を通る時、一瞬だけ凌哉くんの足元に目をやった。するとズボンのポケットから、中華街で買ったあのパンダのストラップが出ていることに気づく。
あのストラップ…まだつけてる…
それを見た途端、目がじわりと潤んでしまい、私は目の奥にぐっと力を入れて我慢した。
凌哉くんが椅子を引いて席に座る音が後ろから聞こえ、荷物を整理しながら後ろの様子を気にして意識してしまう…
まだ凌哉くんの顔を一度も見られないけど、今どんな顔をしてるんだろう…
気になるけど怖くて見られないなぁ…
「えー…この前の授業の時に配るのを忘れたプリントがあるので今配るぞ~テスト範囲が書いてあるから、ちゃんと勉強しておくように」
先生が窓側の席からプリントを配り始めた。ちなみに担任は現代社会の先生だ。
さ、最悪…
プリントを配られてるってことは、後ろに回さなきゃいけないってことじゃん!
後ろの席は凌哉くんだから、必然的にプリントを後ろに渡さなくちゃいけない…
窓側から順に来て先生は廊下側の席にたどりつい、一番前の席の私に人数分のプリントを私に渡した。私はプリントを1枚取り、手を震わせながらゆっくりと後ろに回した。
別に後ろを振り向かなくたっていいんだ…プリントだけ後ろに回せばいい…
些細な事だけれど、こんなふうに凌哉くんを避けているのはやっぱり悲しい…好きなのに避けなきゃいけないくらい気まづいのは、思っていた以上にきついな。
自分から凌哉くんを遠ざけたくせに、自分勝手にも程がある…
「…」
私が後ろに回したプリントを、凌哉くんは何のためらいもなく受け取った。なんとなくだけど、受け取り方が冷たく感じて少し胸が傷んだ。
学校に来ることは出来たけど、このままの状態があとどれくらい続くのかな…この気まづさが消える日は来るんだろうか…
期末が終わってしまえば夏休みだし、1ヶ月以上経てば平気になるのかな。
時間が経てば、凌哉くんはもう私のことなんて忘れるのかな…新しく好きな人ができたりするかな…
そんなの嫌だよ…
私はきっと夏休みが過ぎても心変わりなんて出来ないと思う。きっと、今と同じくらい凌哉くんが好きだよ…
こんなことなら、お互いを知る前に付き合えば良かったな…凌哉くんから告白された時点で付き合えば良かった…
私は凌哉くんのことを知りすぎた。
深いため息をついたあと、目にぐっと力を入れてこぼれ出そうになった涙を我慢した。
その日は移動授業ばかりで凌哉くんと顔を合わせることが少なく、あっという間に昼になり学校は終わった。
HRが終わると凌哉くんは足早に帰って行ってしまい、また心が痛くなった。
教室の窓際にクラスの男子数人がたまっている。その中でひとり、輪の中から外れて窓の外を眺めている後ろ姿…
凌哉くんだ…
どうしよう…やっぱり怖い…
「沙世。とりあえず席に座んな」
「さっきも言ったけど、今日は移動教科ばっかりだから大丈夫だよ」
私を無理矢理席に座らせる春子。そして多美子ちゃんが思い出したように言う。私は「う、うん」とやや緊張したように言った。
そうだよね…
今日は午前中までだし、幸いにも今日の科目は全部移動授業だから凌哉くんと顔を合わせることが少ないんだよね。
ガラガラ
「HRやるぞー」
教室に担任が入って来ると、生徒達は一斉にそれぞれの席につく。
うつむきながらカバンから荷物を出していると、目を向けなくてもだんだんと凌哉くんが近づいてくる気配がした…
心臓がバクバクして手が震える…席が近いのはいいことばかりじゃないなぁ…
タン…タン……
凌哉くんが私の横を通る時、一瞬だけ凌哉くんの足元に目をやった。するとズボンのポケットから、中華街で買ったあのパンダのストラップが出ていることに気づく。
あのストラップ…まだつけてる…
それを見た途端、目がじわりと潤んでしまい、私は目の奥にぐっと力を入れて我慢した。
凌哉くんが椅子を引いて席に座る音が後ろから聞こえ、荷物を整理しながら後ろの様子を気にして意識してしまう…
まだ凌哉くんの顔を一度も見られないけど、今どんな顔をしてるんだろう…
気になるけど怖くて見られないなぁ…
「えー…この前の授業の時に配るのを忘れたプリントがあるので今配るぞ~テスト範囲が書いてあるから、ちゃんと勉強しておくように」
先生が窓側の席からプリントを配り始めた。ちなみに担任は現代社会の先生だ。
さ、最悪…
プリントを配られてるってことは、後ろに回さなきゃいけないってことじゃん!
後ろの席は凌哉くんだから、必然的にプリントを後ろに渡さなくちゃいけない…
窓側から順に来て先生は廊下側の席にたどりつい、一番前の席の私に人数分のプリントを私に渡した。私はプリントを1枚取り、手を震わせながらゆっくりと後ろに回した。
別に後ろを振り向かなくたっていいんだ…プリントだけ後ろに回せばいい…
些細な事だけれど、こんなふうに凌哉くんを避けているのはやっぱり悲しい…好きなのに避けなきゃいけないくらい気まづいのは、思っていた以上にきついな。
自分から凌哉くんを遠ざけたくせに、自分勝手にも程がある…
「…」
私が後ろに回したプリントを、凌哉くんは何のためらいもなく受け取った。なんとなくだけど、受け取り方が冷たく感じて少し胸が傷んだ。
学校に来ることは出来たけど、このままの状態があとどれくらい続くのかな…この気まづさが消える日は来るんだろうか…
期末が終わってしまえば夏休みだし、1ヶ月以上経てば平気になるのかな。
時間が経てば、凌哉くんはもう私のことなんて忘れるのかな…新しく好きな人ができたりするかな…
そんなの嫌だよ…
私はきっと夏休みが過ぎても心変わりなんて出来ないと思う。きっと、今と同じくらい凌哉くんが好きだよ…
こんなことなら、お互いを知る前に付き合えば良かったな…凌哉くんから告白された時点で付き合えば良かった…
私は凌哉くんのことを知りすぎた。
深いため息をついたあと、目にぐっと力を入れてこぼれ出そうになった涙を我慢した。
その日は移動授業ばかりで凌哉くんと顔を合わせることが少なく、あっという間に昼になり学校は終わった。
HRが終わると凌哉くんは足早に帰って行ってしまい、また心が痛くなった。