オオカミくんと秘密のキス
「ただいまー」


すると、玄関が開く音がして男の人の声が聞こえて来る。





「あ、お兄ちゃんだ」


飲み物を飲んでいる寧々ちゃんが、玄関の方を見て言う。




「お兄さんいるの?」

「はい!大学1年の兄がいます」


初耳!寧々ちゃんてお兄さんがいたんだ。






「あ、やっぱり寧々の友達が来てたのか。玄関に靴があったからそうじゃないかって思ってたんだ」


私達4人はリビングのドアに注目していると、寧々ちゃんのお兄さんがリビングに顔を出した。

お兄さんはとても優しそうで柔らかい雰囲気があり、背が高く眼鏡をかけたイケメンだった。





「私結構好みかも~」


お兄さんを見るなり、多美子ちゃんが小声で甘い声を出す。



「お兄ちゃん彼女いるんです…」

「なんだぁ」


寧々ちゃんがそう言うと、多美子はがっかりしたように肩を落とした。




彼女持ちかぁ。ま、普通にかっこいいし寧々ちゃんみたいに見た目から優しそうな感じがわかる人だから、彼女がいてもおかしくないよね。





「お間邪魔してまーす」


私達はお兄さんに挨拶をして頭を下げた。





「寧々の兄の政宗(まさむね)です。いつも寧々がお世話になってます。ゆっくりして行ってね」


ニコッと笑う政宗さんは、どこなくかわいくて多美子ちゃんが顔を赤くしている。



笑った顔とか寧々ちゃんにすごく似てるなぁ…あんなかっこいいお兄さんがいるなんて羨ましいよ。






「早かったね」


キッチンの冷蔵庫を開ける政宗さんに話しかける寧々ちゃん。敬語を使ってない寧々ちゃんは、なんだかすごく新鮮。





「ああ…まあな」

「今日は彼女とデートじゃなかった?」

「…ま、ぁ…な。いいだろそんなことは…」


冷蔵庫から麦茶を出してグビグビと飲む政宗さん。


彼女とデートかぁ。なんか勝手に色々想像しちゃうな…

てゆうか、彼女とデートすることとか寧々ちゃんに話したりするなんて…兄妹仲すごくいいよね。ますます憧れるな。






「あ、そうだ。お兄ちゃんて数学得意だったよね?暇だったら教えてよ」

「…数学?」


寧々ちゃんが私達のいるリビングのテーブルに戻って来ると、政宗さんにそう言った。

男キライの春子は無表情で特に何も思ってないようだったが、多美子ちゃんに至っては嬉しそうだった。






「お願い!私達みんな数学はダメなの」

「じゃあなんで勉強会なんてしてるんだよ…」


呆れたように言い、私達のいるテーブルにやって来る政宗さん。


確かに…言ってることは当たってるな(笑)







「よいしょ。…数学の教科書見せてみろ。テスト範囲はどこだ?」


私と寧々ちゃんの間に座る政宗さんは、そばにあった数学の教科書をペラペラとめくる。




優しいな…

嫌がったり文句も言わないで教えてくれるなんて…こんなお兄ちゃん欲しい……
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