【いつきの小説講座】
まずはいつもどおりに例文から。




 恭しく俺は一礼をし、宛ら空蝉の如く壁の隅に身を引いた。

 ウェイターというのは所謂、黒子のようなものなのだ。




これを読んで何を感じただろうか?

俺ならこう思うね。

「読めねぇ漢字がありすぎだろ!」

ってね。

つまり、それが『リズムの阻害』につながるというわけなのさ。

どれだけ優れた文章であろうとも、読めなければ意味がない。

同じように、どれだけリズムのよい文体であっても“読めない漢字”がまるで休符のごとくリズムを乱しては意味がない。

そもそも、だ。

漢字をやたらめったら使えば知的な文章ってわけじゃぁない。

それはただの独りよがりだ。

作家とは、物語を書くという創造力も必要だが、それと同じくらい、いやもしかするとそれ以上に──

『読者がどのように読むかという想像力』

が必要になってくるのさ。

俺はね、本当に頭の良いやつってのは知識が豊富なやつのこというんじゃなくって、よりうまく“物事をかみくだいて相手に伝えられる”やつのことだと思うんだ。

それはすなわち表現力の豊かさにつながる。

そしてそれはいつでも発信者と受信者のチャンネルが合っていないと意味がない。

それが


『読みやすい』


ということなのだよ。

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