スノードロップの医学書
その歌声は、寂しくもあり、切なくもあり、悲しくもあり、
だが、スナヲの心を和ましてくれる。
湖面の側でスナヲは、体育座りで少女の美しい歌声を聴いていた。
しばらくすると、小島から一艘の和舟がゆらりゆらりと向かってくる。
その和舟は、スナヲの目の前の岸に着ける。
スナヲは、躊躇せずに無人の和舟に乗り込んでいく。
スナヲを乗せた和舟は、ゆっくりと小島に向かって行く。
和舟が小島に着くとスナヲは、飛び下りて少女のところへ近づいて行く。
「こんにちは」
少女は、スナヲの顔を見ているだけで何も応えない。
スナヲは、少女の座っている流木に腰掛ける。
「ボク、スナヲ、君の名前は?」
少女は何も応えない。
「美しい歌声ですね、その唄なんて言うの?」
少女は、スナヲの顔をじっと見ているだけで何も応えない。
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