ようこそ、【デクヴァイ】へ。
ボロボロすぎたり、黒く染まっていたりで中々読みにくい。
その上どーやら英語じゃないらしい。
決して得意な部類にはいることのない英語だけど、単語ぐらいは読める、……ちょっとね。
「て、でこぅ…?
でこぉーば……」
「デクーヴァイル」
流暢な発音の後に、ちなみに造語ね、と言葉が。
顔を向けると、おいでおいでされたので、まぁ怪しさマックスだけど気にはなるから従っておく。
もちろん、後ろ手にドアは閉めときましたとも!
「造語?」
「そ。
単語と単語を合体させて、新しい単語にしちゃう奴ね」
「へ~…英語?」
「どっちかって言うとフランス語かな~」
「じゃあ分かんないや」
「あら、残念」
ゆっくりゆっくり、慎重に近づきながらの会話。
相変わらず、季節はずれの扇子をパタパタ仰ぎながらニマニマ笑ってる目の前の人。
「ちなみに僕、店長さんです」
扇子で自分を指さして、からの爆弾発言。
思わず声を荒げちゃいました。へへ。
「えぇえぇぇえっ!??
ぁ、アンタが店長さんんんんっ!!??」
「うん、店長さん」
この、私の目の前でニマニマ笑ってる怪しさマックスの危険人物が店長さん!!??
……………18年間。
真っ直ぐな道を歩いてきた記憶はなくて、たま~に道草して、たま~に後ろ振り返ったりして生きてきましたけど…。
世の中、まだまだ私の知らないことばかりです。
お母さん。
こんな人でも、店長さんになれるみたいです。
…………。
なら私は社長になれるな。
「……なんか、失礼なこと考えてない?」
「滅相もございません」
「…あ、そう…」
ぴくり、と思わず肩が揺れてしまった。
変な人は変なところで勘が良いのか…、覚えておこう。
メガネに隠れて見えないけど、間違いなく疑いの視線を向けられているのは感じる。
とても居たたまれないので、この空気感をどうにかしたい…。
「ぉっ、お店なら、これ!!
これみんな商品なの……?」
目の前にも。
もちろん奥にもズラーッと並べられている(※積み上げられてる)物たちを指さして、れっつ・話そらし作戦決行。
我ながら良い案だったらしく、店長さんも思いだしたように扇子のヒラヒラを再開。
…よ、よかった……。