ようこそ、【デクヴァイ】へ。
とぼとぼと歩く帰り道。
そっと触れた左手の薬指。
其処に触れるはずだった冷たい感触の其れは感じなくて、ほっとするくらい暖かい自分の体温しか感じられない。
本来だったら安心する体温なのに、何故かそれがとても辛くて悲しくて。
でも自分でも分からない。
其処にあったものはどんなもので、本当に自分の大切なものだったのか。
そして自分で手に入れたものなのか、それとも誰かに貰ったものなのか。
「なんで忘れてるんだろう…」
「ん~、なにが?」
ぼそっ、と呟いたらふんわりと目の前に現れる白い雲。
季節は冬。
マフラーに顔をうずめながら、寒さにしのぐ姿は珍しくない。
傍を歩く友達だったり、後ろを歩く同じ学校の子たちだったり。
首を傾げながら続きを促す友人に、なんでもないよ、と苦笑まがいな返事を返してそっと制服の袖から伸びているカーディガンに指先を隠した。