ようこそ、【デクヴァイ】へ。
ゆっくりゆっくり進んだせいか、ドアをつなぐちょっとした階段を目の前にしたら、どっ、と疲れが襲ってきた。
何だろう…。
一年分の緊張感を使い込んだ気がする…。
きっと私はこの先一年、絶対これ以上の緊張感を味わうことはないだろう。
そんな気がする。
一応、こっからが本番だったりするわけ。
古びた丸太で作られた階段を数段あがって、それで窓からこっそり中を伺えばいい。
たったそれだけなのに、やけにこの階段が高く見える……。
「此処まできて、帰るのは…やだ……し……」
ぼそっ、と気持ちを表に出してみた。
ちょっとは足も動くだろうと思って。
誰かが言ってた気がするもん。
怖いときに怖いって言うと本当に怖いけど、怖くないって言えば別のことを考えるくらいの余裕はできる、って。
…………たぶんね。
ぐっ、と足に力を入れて、ふんっ、と前に持ち上げる。
ぎしっ。
まずは一段。
ふー、っと深呼吸して。
ぎしっ。
からの二段、三段。
そして、目の前には木彫りのドア。