ようこそ、【デクヴァイ】へ。
そっ、とドアに近づいて、うっすら中が見えそうな窓から中を覗く。
ぼんやりと見えるのは、おっきな影。
四角かったり、丸かったり。
大きかったり、小さかったり。
長かったり、短かったり。
広がってたり、重なってたり。
……よく、分かりません。
動く影が無いことから察するに、きっとまだ人はいないんだろう。
とりあえず荷物だけおいて、あとはまた明日~、…みたいな。
そう思ったら一気に肩の力が抜けた。
なんだなんだ。
せっかくどこの誰だか突き止めようと思ったのに、損しちゃったじゃない。
どっ、と疲れを体に感じて、なんだかやるせない気持ちになっちゃって。
そしたら理不尽な怒りも出てきちゃって。
ふつふつと煮えたぎる当たりようもない理不尽な怒り。
何かに当たらないと気が済まない。
後々考えたら、此処で怒りをドアにぶつけなるように蹴り飛ばさないでいれば。
ドアが大きな音立てて開くことはなくて。
開いたドアから見えるお家のカウンターらしきところに座る人が、かなりビックリしてこっち見て固まってることもなくて。
振り上げた足からのぞくものが、その人の視界に入ってたんじゃないかとか心配する必要もなくて。
そう。
ようは、蹴らなければ良かったな、ってことなんです。ドア。