片道キップを二人分
そんなある日。一人での通学が最早当たり前になった頃。
最寄の駅で呼び止められて振り向けば、そこには斗真とよく似た、斗真より少しだけ大人な男の人が立っていた。
「突然ごめんね?…最近、いつも一緒のヤツといないから、思い切ってみたんだ」
そう言って屈託ない笑顔を見せたその人は、吉野徹也、と名乗った。
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徹也さんと一緒にいるのは心地良かった。
はじめは一緒にいた友人に、高校の頃のお前にそっくり、と斗真を指差されたのがきっかけだったらしい。
ほぼ毎朝、斗真と一緒に通学するあたしを見て、いつの間にか気になってたんだ、と笑った。
最近あいつと一緒じゃないのを見て、別れたのかな、って気になって、誰かに取られる前に声掛けてみたんだ、と。
斗真は双子の兄で、彼女ができたらしいから、と時間を掛けて伝えたあたしに、徹也さんはなぜか少しだけ複雑そうな表情を見せた。