片道キップを二人分
逃避
「そうそう、真菜」
「なぁに?」
「明日と明後日、お父さんとお母さん、田舎の伯父さんの法事に行ってくるから」
ご飯を食べて二階の自室に向かおうとしたあたしに、お母さんが思い出したように声をかけてきた。
え?っと振り返ると、リビングのソファーでテレビのリモコンを手にしている斗真がほんの僅かにこちらを向きかけた。
「…ん、分かった。気をつけてね」
「そうじゃなくて、ご飯どうする?っていう話なのよ」
リビングを出たあたしを慌てて追いかけてきたお母さんに言われて、その間は斗真と二人きりなんだと気づいた。
「あ、食べてくる」
「あらそう?よかった…斗真も外で済ませるって言ってたから」
お母さんのその言葉に、あたしは斗真があたしと二人きりになりたくないと思っていることを実感した。
自分の行動を棚に上げて、あたしは僅かに痛んだ胸には気づかないフリをした。