片道キップを二人分
「…ちょっとこい」
今家の中で唯一明かりの点いているリビングに入ろうとした所で、斗真が横を通り過ぎざまに再びあたしの手首を掴んだ。
そのままグイッと引かれて、階段を上がっていく。
「斗真!なんなの?…離してよ!」
あたしの言葉が形だけのものだと、お願い、どうか気づかないで。
斗真に触れられた手首が痛ければ痛いほど、斗真を感じて嬉しいだなんて。
あたしの部屋の前を通り過ぎて、斗真が自分の部屋のドアを乱暴に開ける。
玄関の時と同じように、あたしの身体を突き飛ばすようにしてから、後ろ手に鍵を掛けた。