片道キップを二人分
禁忌
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月明かりだけが差し込む、薄暗い室内で。
産まれたままの姿であたしは斗真を見上げた。
斗真の、深く濃い、漆黒の瞳に映るあたしは、今までで一番幸せな顔をしているような気がした。
「本当に、後悔しない?」
「もう、しつこいよ…しないってば」
「オヤジにも、オフクロにも、嘘つくんだぞ?」
「……もういいよ…じゃ、止めよう」
あたしは斗真の肩を押すようにして、身体を起こそうとした。
「や、それももう無理…なんだけど…」
口ごもる斗真に、あたしは小さく溜息を吐いた。