片道キップを二人分


隠れて繋いだ指先も、隠れて交わしたキスも、全てが大切な思い出だから持っていく。
そっと隣を見上げれば、どした?とすぐに声が掛けられた。





「なんでもない」
「なんでもないって言いながら笑う訳?」
「うん。だって、斗真ってやっぱり誰よりもカッコイイなぁ、って思ったから」

あたしの言葉に面食らったみたいに息を呑んで、次の瞬間には顔をクシャッとして笑う。



「そりゃどうも。いつまでそんな風に言ってもらえんのか…捨てられないように努力しねぇとな」

斗真の大きな手があたしの髪を撫でて、グッと距離を縮めた斗真の口許が、あたしの耳許に寄せられた。




「向こう着いたら、まずは身体で満足させてやるから楽しみにしてて?」
「うわ…弁護士先生、セクハラ発言」

くすくす笑いながらそう言えば、合意の上ですから、とシレッと返された。




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