嫌い嫌いも、好きのうち!
翔と気まずくなってからも、毎年チョコを作っていた。
それでも渡せなかった理由は、たくさんある。
気まずくたって、幼なじみなんだし、強引に渡すことだってできたけど、それをしなかった。
あたしに勇気がなかったから。
中学に入って、翔は急にモテだした。
バレンタインには、女子から呼び出しを受けているのを、何度も見た。
あたしが翔と幼なじみだと誰かから聞いたのか、他クラスの女子からよく翔の呼び出しの言伝を頼まれた。
そのたびにあたしはマリちゃんに頼んで、女子の伝言を翔に伝えてもらっていた。
たぶん、あたしにとってそれは翔と話すチャンスだったけど、明らかに告白ってわかるそれを、自分が翔に伝えるのはつらかった。
なにより、それに応じて教室を出ていくその後ろ姿を見るのが苦しかった。
付き合っちゃうのかな、とか。
今の子、可愛かったな、とか。
そんなふうに心をモヤモヤさせて翔を見ることしかできない自分が、嫌だった。