嫌い嫌いも、好きのうち!

 あたしに勇気があったら、きっと翔との距離はこんなにひらかなかったんだと思う。


 でも、翔はモテてたし、バカで元気なことだけが取り柄のあたしがその隣にいるのは、ふさわしくないんだろうなって思って、翔があけた距離の分だけあたしも遠ざかった。


 ……お互い気まずくなって、あからさまに避けられ始めてから、あたしと翔の関係は、幼なじみの遥か下、“ただのクラスメイト”になった。


 いつからか、隣に並ぶこともなくなって、名前を呼ぶこともなくなった。


 小学生だった頃、くだらないことを話しながら毎日歩いた学校への道のり。


 中学も高校も、変わらずそうできたはずだったけど、思春期っていう壁に邪魔されて……。


「マリちゃん、恋愛って難しい……」


 体育のハードルは得意だったけど、幼なじみっていう高いハードルを越えるのは、相当な勇気と、決心がいる。


 それを越えられずに、翔に想いを伝えられないばかりか、距離までひらいちゃったんだから、落ち込むしかない。


 ぽつり、こぼした言葉にマリちゃんは苦笑いして、頭を撫でてくれた。


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