私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「私、此処に来たら落ち着くのよ。薔薇の香りや、色に酔って。だから色々考えなくて済むの。…楽なんだ。」
「そう…なんですか…。」
なんとなく──奈緒様の姿が分かってきたような気がした。
いかにも栄光と幸福に満ち溢れたかに見える奈緒様にだって、他人には知られたくないような闇があるんだ──。
私には、分かる…。
私だって、知らず知らずのうちに美優ちゃんや他のクラスメイトを避けてしまう。
1人になりたくて、ふらついてしまう。
だから──奈緒様の言い様もない孤独感が、分かるような気がした。
「─もう少しで予鈴が鳴るね。」
私の沈黙をどうとったのか、奈緒様は言った。
「あの角に、出口があるだろう。そこをまっすぐ進むと、校舎に入れる。…お行き。」
奈緒様は微笑んだ。
私は素直にお礼を言い、言われるがまま出口へ向かう。