私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「あ-あ…暇ぁ…」
万里先輩も学園を後にしてしまったし、広くて寒い校舎にいるのは私ひとり。
さすがに高校生になってまで幽霊を信じている訳では無いから、特に怖いとは思わないけど…。
何て言うか、不思議。
囁くのは、私の声。
響くのは、私の足音。
動いているのは、私だけ。
まるでつかの間の王者になったような、解放感。
──コツ、コツ…
(…?何の音?)
せっかく自分の世界に浸っていたというのに、急に薄暗い校舎の中に引き戻された。
かすかに耳を入るのは、誰かの足音。
「そんなに遠くない…?」
バタバタと、急いで廊下を走り、突き当たりの角を曲がる。
其処には───…
亜麻色の波打つ髪。
しゃんと筋の通った背中。
白くてはかなげな足元。
間違えようもないだろう、彼女の後ろ姿だ。
──早乙女 エリカ