私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~



それ以上深く、踏み込めなかった。


私とエリカの姿が、万里先輩たちに重なる。


この人もまた、道ならない恋に苦しんで…。



「…私、結婚するのよ」

「えっ?」


万里先輩はあまりに唐突に、そして自然に言った。


「…退学のことも、本当は親が言い出したことなの。3歳年上の許嫁がいるんだけどね、今回のことで焦ったらしくて。…可笑しな話よね、私の意思とは関係無いところで未来が決められていくの」


万里先輩は窓の外、薄暗い曇空に目をやった。

私の手は、震えている。

それが怒りなのか、悲しみなのか、動揺なのか、わからなかったけれど。




「…今から、変えることは出来ないんですか」


私は嫌だ。
そんな運命、選びたくない。
万里先輩に何処にも行って欲しくない。
何より、万里先輩と恋人の、幸せな時間を奪って欲しくない。



万里先輩は僅かに口元を歪ませた。今にも泣きそう──だけど決して涙は流さないだろう。


「…いいの




私が望んだの。きっとここに居たって私たちは幸せにはなれない」



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