私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「……ここを卒業したら、アメリカに行こうか」
薄暗い部屋の中、暖炉の仄かな炎が私とエリカを照らした。
二人の体温で温かくなったベッドの中で、私は上半身だけ起こし、片手でエリカの肩を抱いていた。
「どうして…?」
「アメリカなら、結婚できるでしょう?それに日本より寛容だし」
エリカはふふっと笑った。
「そうね。景色の綺麗な海沿いの一軒家が良いわ。二人だけしか入れないの……あの薔薇園みたいに」
「きっと楽しいよ。うぅん、絶対楽しい」
エリカを抱く手に力を込めた。
私はエリカが居るだけで幸せなんだよ…。
私とエリカで描く未来。
不思議なことに、笑顔の二人のしか思い浮かべることができないのだ。
側に居るだけで幸福になれるのに、それ以上の幸せとはどんなものなのだろうか?
「ねぇ、瑠依」
エリカは暖炉の火を見つめたまま呟いた。
「私はここにいるからね」
そうして私の胸を押さえる。
「いつもここで、あなたのこと考えてるから」
微笑んでいて…それでいて泣きそうな表情で私の瞳を覗き込む。
その切ない表情が、何故か私の心に影を落とした。