私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
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薔薇の花の、むせかえるような甘い香り。


今日も薔薇園は色とりどりの美しい植物に飾られていた。



その中に、ひとり。




淡いピンクの薔薇に触れ、その香りを堪能する横顔は、ひどく、哀しくて……不思議と安らかだった。



私は息を飲んだ。





薔薇色の空間に佇む彼女の姿が、まるで聖母のごとく慈愛に満ちていていたから。







「…………ここはいつでも変わらないわ」


エリカは薔薇に目をとめたまま呟いた。


「どうしたの」とも「何か用?」とも言わなかった。



ただ無言で、私をその世界に受け入れた。








何を言えば良いのか……分からない。



茉莉依と話しているときにはあった勢いが、完全に消えてしまっている。




数日離れていただけなのに、私は彼女の呼吸を忘れていた。

言葉なんてなくても、お互いのことは理解しきってると思ってたのに……。




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