私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「ねぇ、瑠依」
先に口を切ったのはエリカだった。
今度はちゃんと、私を見てくれている。
「私………何も知らない子供なのよ」
そう言って薄く笑うが、皮肉は込められていなかった。
「私、今考えればこの学園以外の世界って、知らないのよ。物心ついた時には1日中ベッドに引っ付いていたし。世の中ってそういうものだと思っていたわ。外に何があるなんて、誰も教えてくれなかったもの。
…でも、あなたは教えてくれた」
「………うん、知ってる」
知ってるよ。
でもエリカが私を思っている以上に、私がエリカにどれ程救われたか、あなたはわかってる?
「でも、それでもまだ小さかったのね。…茉莉依ちゃんに言われて気付いたの。私、あなたしか知らないわ」
「私しか…知らない?」
エリカはゆっくりと頷いた。
「私のことをこんなに分かってくれている人、あなた以外に居ないのよ。雪村もおばあ様も私に良くしてくださるけど、あなたほどじゃないわ。
でもそれも結局、この学園だけの話だと思ったの……」
「エリカ……」
私の知らないうちに、あなたは何を感じたの?
私のことは…この箱庭が作っただけの存在だと?