私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「千雪、ちょっと来て」
有無を言わさぬ強い口調で、美優ちゃんは私を引っ張った。
連れていかれたのは、古びた温室。
もう使われていないのか、所々ガラスの破片が落ちている。
美優ちゃんはそれを器用に避けて、人が座れそうな台に私を座らせた。
美優ちゃんが隣に腰掛け、彼女の優しい香りが鼻をくすぐる。
「…千雪、話して」
静かに、それでいて意思の強さを伺わせる口調で、美優ちゃんが口を開いた。
「最近、千雪がおかしいのはわかってたよ。急に元気になったり、落ち込んだり。でも千雪は何も言おうとしないから、聞かなかった。秘密主義なのかな、って割りきって」
美優ちゃんの瞳が私のそれを捉えた。
「でも…、辛いんでしょ?見たら分かるよ。千雪、何かに苦しんでる。…私じゃ何も出来ないの?話さえ聞くことも出来ないの?
……親友が辛い思いをしてるのに、黙って見てろって言うの?」