私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
けれど、数歩進んだのち、私はぴたりと歩みを止めた。
そしてくるっと奈緒先輩の方に向き直ると、まだ驚きに固まっている彼女の目の前に、立ち尽くした。
───ちゅっ
私は身を屈まして、奈緒先輩の頬──限りなく唇に近い位置に、口付けをした。
奈緒先輩はまたまたびっくりしたようで、黙ったまま。
普段の私では考えられない行動だ。
私はにっこり笑って、奈緒先輩を見つめる。
「私、奈緒先輩のこと、大好きです」
青空に晴れ渡る玲瓏とした声音。
放心したように座っている奈緒先輩を残して、再び薔薇園を後にした。
──どうか、奈緒先輩が追って来ませんように。
頬を伝う一筋の滴に、気付かれては困るから──。