私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
『奈緒、今日から高校生になるな』
「そうだね。って言ってもメンバーは殆んど変わらないから入学って感じはしないけど」
私はリボンタイを直しながら、受話器に答えた。
心配性の父は、家族サービスなんかしたこと無いくせに、ことある毎に愛娘に連絡を寄越してくる。
私はめんどくさそうに(実際面倒臭かった)、「じゃあ切るね」と言うと、返事も聞かずに通話ボタンを切った。
リボンタイが上手く結べず、自然と眉間に皺が寄る。
中学までの制服は紐リボンだった。
「……っと、出来た」
ようやく形の整ったタイを撫で、私は全身を鏡に写しだしてみた。
(あなたは、永岡 奈緒。演劇部のトップスター。みんなのアイドル…)
目を瞑り、祈るように自分の心に呼び掛けた。
私は毎朝自分に魔法をかける。
私が私でいるための呪文。
積み重ねた嘘。
(よし、大丈夫。)
私はパンパン とプリーツスカートの裾を直すと、一人では広すぎる寮部屋を後にした。