私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「ねぇ、永岡さん…と言ったかしら」
HR後、案の定西宮静架は話しかけてきた。
始業式もHRも終わった今、残すはクラブ活動だけだ。
浮き足だった生徒たちを尻目に、私はちらっと静架の方を見た。
静架は努めて愛想良くしようとしている。
(なんだ…。全く不安じゃないって訳でも無いのね)
私はにやっと意地の悪い笑みを浮かべてしまう。
「何?」
「あのね、このあと暇?暇なら早速、校舎を案内してほしいのだけど…」
控えめに尋ねる。
私が嫌だと言ったら、彼女はこの笑顔をどんな風に崩すだろうか。
私は何も言わず、近くにいた生徒を呼びつけた。
この生徒は熱狂的な私のファン。
私に話しかけられただけで、きゃっと小さな悲鳴を上げた。
「な 何でしょう、奈緒様…?」
「うん、彼女の校舎案内、してほしいんだ」
私が静架の方を指差すと、あぁ、とその子は納得した。