私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「……!!」
最初は誰か分からなかったけど、あの姿は──まさしく演劇部のトップスター。
生垣をぬけた先の小さな薔薇園に、その人は腰をかけていた。
「あ………」
「………誰?」
私がもらした小さな呟きを拾って、奈緒様は振り向いた。
奇妙な沈黙。
なんだかいたたまれない…。
とは言っても引き返せないし…。
「あ──すいません、私… 迷子になってしまって、その……」
ごにょごにょと呟く。
すると奈緒様はふっ と笑って、此方へおいで、と手招きする。
「珍しいな、迷子なんて。この辺りは誰も近づかないから来る人も少ないんだと思ってた。」
言われた通り奈緒様の隣に腰かける。
奈緒様は…朝見た時とはちょっと様子が違う。
なんだか寂しい感じ。
「すいません、気が付いたら迷っていて…。
あの、それで──」
私が言い終える前に奈緒様は あぁ と呟いた。