私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「奈緒様、あの──」
「なに?」
取り巻きのリーダーである同級生が進み出た。
「西宮静架さん、どうしますか?奈緒様が嫌がられているなら、私たちで対処しますが…」
対処──
彼女の言うそれがどんなものであるか、私はなんとなく知っていた。
およそ女の子らしくない行為である。
取り巻きたちが勝手にすることなので、いつも私は無視を決め込んでいた。
「あぁ…静架…、静架ね…」
ぼんやりその人を思い出した。
昨日は彼女のおかげで大分疲れたのに、今となってはもう気にならない。
──静架。
彼女のことは好きにはなれない。
だけど…だからといって嫌いな訳じゃない。
むしろ、あのさっぱりした性格には好感さえ覚える。
私には未知の領域の存在だ。
「彼女のことは放っておいて。そのうち飽きるだろうから」
「ですが、彼女は昨日演劇部にまで来ていて…」
「静架さんは私の邪魔をするために入部する訳じゃない、元から演劇をしていたからだよ」
鬱陶しそうに言い捨てると、わずか眉を潜めてその子は下がった。
(私、いつから女王になったんだろ…)
ふとそんなことを思いつつ、その仮面を被ったのは私だと思い出した。
「西宮 静架、か…」
彼女なら、私を見付け出してくれるだろうか?