私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「──もう、いいわ。皆の憧れの“奈緒様”を一度見てみたかったけど」
──これじゃ期待外れだし。
静架が言おうとしていた言葉が、不思議なくらい分かる。
わかってる、静架が私を挑発していることくらい。
私を本気にさせる気なんだろうし、実際私も本気になりかけている。
……でも、やっぱり駄目なんだ。
やっぱり、部活に出て静架と向き合おうという気にはなれない。
今までどんな気持ちでトップスターを演じてきたのか、分からない。
──魔法が、とけた。
仮面を剥いだ私は、一体どんな顔をしているんだろう?
──静架。
やっぱり彼女は私が知らないタイプの人間だった。
私の魔法をいとも簡単に解き、裸の私を見い出した。
私を守る盾や甲冑は、彼女の前ではすべて剥ぎ取られてしまう。
(敵わないな…)
自嘲気味にぼんやり思うと、静架が歩き去って行った戸を見つめる。
「早く、戻らなきゃ…」
私が永岡奈緒である意味を忘れる前に。
また明日勝ち誇った笑顔で彼女と肩を並べるために。