私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「あ……」
言葉が、上手く紡げない。
感慨に浸る私をよそに、静架はどうぞとでも言うように近くのベンチに誘う。
刹那、静架の笑みが強張った。
「やだ……どうしたの!?」
慌て静架が駆け寄り、私は初めて気付いた。
──自分が涙を流していることに。
「あ、れ……?」
そっと頬に触れてみると、ここ数年感じたことのなかった水の筋が二本、通っている。
(嬉しいんだ………)
この薔薇園──つまり、私を見付けてくれたことが。
抽象的な妄想が、現実になった。
彼女が探してくれた、見出してくれた。
自分でさえ辿り着けなかった、私の心に──。
「ふふっ…もしかして、感動の涙ってやつ?」
私が動揺した様子を見て、イタズラっぽく静架が顔を覗き込んできた。
「ち 違うっ これは…っ」
私は赤く染まる頬─夕日のせいではない─を乱暴に拭い、ドカッとベンチに腰掛けた。