私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「夕日、綺麗ね──。」
静架がふっ と呟いた。
深紅の光が私たちを取り巻いている。
しばらくそのまま、沈黙が続いた。
(不思議だな……)
西宮 静架。
高等部からの転校生。
同じクラスの隣の席。
……私の、天敵。
カテゴリに分けるとしたら私とはかなり掛け離れている彼女が、いとも容易く私の願いを叶えてくれるなんて……。
ちら と隣で太陽を見つめる彼女を盗み見る。
そう言えば、静架は最初から変わっていた。
何の変哲もないマンネリ化した日常に、一瞬で色を着けた人。
───隣にいることが、心地良い。
柔らかな毛布にくるまれているような、そんな安心感。
きっと二度と、そんな安らぎを感じることは無いと思っていたのに。
そっと 目を閉じ、静架の息づかいを感じた。
「──静架。」
「……?何?」
静架は突然呼び捨てされたことに面食らっていたが、何も言わなかった。
「ありがとう……」
それだけ言うと、恥ずかしさに目を伏せた。
静架はにっこり笑って、「どういたしまして」と答えた。