恋日和 〜キミに届かない恋でも〜



苦しいことを忘れたくて。
うしろを振り返りたくなる気持ちを捨て去ろうと、思い切り駆け始める。


ーー走れ、走れ、走れ。
ただ、そう言い聞かせて。



私って……こんなに走れるんだ。
いつも、思い切り走ってる希子が憧れだったから、すごく嬉しくなる。


風の音も鮮明で、心地よい。





ーーでも、すぐにスピードは緩んで、走るのをやめる。
待ち合わせだった時計塔あたりまでくると、呼吸がどんどん乱れてきて。


苦しさなんて紛らわせなかった。
それにもっと、苦しくなるって……わかってたのに。



気がつけば、歩く足も止まって、倒れ込んでいた。


ヒューヒュー、と嫌な呼吸の音が聞こえる。

苦しくて、悲しくて、悔しくて。
涙が溢れるまま、目をつむった。




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