恋日和 〜キミに届かない恋でも〜



だけど希子には届いたようで、小さな声で『うん』という言葉が返ってきた。



「そんなに言うなら、聞かない」

「うん、ありがとう」

「……でも、本当になにかあったなら、今日じゃなくてもいいから教えて欲しい」

「うん……わかった」



心配してくれてるというのが、ものすごく伝わってくる。
感謝と謝罪の言葉と気持ちで、胸が溢れかえっている。



「だってさ、走っちゃいけないのを一番わかってる莉子が、理由なく走ったりするわけないもん!」



そんな言葉に、視線をを希子のほうに戻す。
希子はすごく真剣な眼差しをしていた。



「ありがとう」

「ううん。 ……じゃあ、また明日くるね」

「うん。 ばいばい」



希子は名残惜しそうに、手を振って病室から出て行った。


相変わらずのひとりの病室は、静かすぎて悲しくなる。
そして胸も、相変わらず苦しいまま。




< 116 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop