恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
だけど希子には届いたようで、小さな声で『うん』という言葉が返ってきた。
「そんなに言うなら、聞かない」
「うん、ありがとう」
「……でも、本当になにかあったなら、今日じゃなくてもいいから教えて欲しい」
「うん……わかった」
心配してくれてるというのが、ものすごく伝わってくる。
感謝と謝罪の言葉と気持ちで、胸が溢れかえっている。
「だってさ、走っちゃいけないのを一番わかってる莉子が、理由なく走ったりするわけないもん!」
そんな言葉に、視線をを希子のほうに戻す。
希子はすごく真剣な眼差しをしていた。
「ありがとう」
「ううん。 ……じゃあ、また明日くるね」
「うん。 ばいばい」
希子は名残惜しそうに、手を振って病室から出て行った。
相変わらずのひとりの病室は、静かすぎて悲しくなる。
そして胸も、相変わらず苦しいまま。